2021/08/27

音声認識のメリットとコールセンターでの活用事例|できることや仕組みを徹底解説

音声認識のメリットとコールセンターでの活用事例|できることや仕組みを徹底解説

音声認識は、人の声を機械的に解析してテキスト化する技術です。テキスト化によって、業務効率化・顧客満足度の向上・顧客データの分析などを実現できます。

しかし、どのような仕組みで行われているのか、実際にどうやって導入したら良いのかについては詳しく知られていません。高いIT技術を必要とするそのイメージから、導入に足踏みしてしまうケースもあるでしょう。

そこで本記事では、音声認識の基本やその仕組み、メリット・デメリットを解説します。また、導入手順に加えてコールセンターにおける事例と具体的な音声認識技術にも触れますので、ぜひ最後までご一読ください。

音声認識とは

音声認識とは、人の声を機械的に解析し、テキスト化する技術のことです。この技術は、コールセンターにおいても利用されており、お客様の声を自動的にテキスト化することでオペレーターの負担を軽減し、効率的な応対を実現できます。

また、音声認識技術を活用することで、自動音声応答システムのような、人工知能による自動応答も実現可能です。こうした技術の発展によって身近な存在となりつつあり、導入するコールセンターも増えているのが実情です。

音声認識でデータ化する仕組み

音声認識でデータ化する方法は、以下の仕組みによって確立されています。従来の手動入力には限界があるため、通話内容を自動的に文字起こしをし、データベースに保存できます。

  1. 音響分析でデータ化
  2. 音響モデルでの抽出
  3. 発話辞典・言語モデルで単語化
  4. テキストとしての出力

 

まず音声をマイクなどで収集し、音響分析によってデータ化します。このデータをもとに、音響モデルで音声の特徴を抽出し、発話辞典・言語モデルで単語化を実施します。これらの情報を組み合わせて、テキストとして出力します。

AIを用いた音声認識とは

AIを用いた音声認識とは、人工知能技術を応用して、音声データから話者が発する言葉を文字データに変換する技術のことです。AIが学習した音声データと、入力された音声データを比較し、最も可能性が高いとされる文字列を出力することから精度を高められます

身近な例としては、スマートスピーカーや自動音声応答システムなどが挙げられるでしょう。ただし、音声認識技術においては、音質や話者の発音の個性などによって認識精度が低下する可能性に対して考慮が必要です。

音声認識を導入するメリット

音声認識を導入するメリットは、以下が挙げられます。

  • 業務効率化
  • 顧客満足度の向上
  • 顧客データの分析

業務効率化

音声認識を導入することによって、従来の手入力による顧客情報の入力作業が不要となるため、作業時間を短縮といった業務効率化を実現できます。

コールセンターにおいては、音声認識技術を活用してオペレーターが顧客対応時によく使うフレーズや表現をテキスト化し、トレーニングに役立てるといったことも可能です。

議事録のテキスト化においても利用できますし、翻訳機能を活用して外国語を日本語に、日本語を外国語に変換するといったツールまで存在するため、業務効率化において解決したい課題にあわせて導入できます。

顧客満足度の向上

音声認識を導入することによって、顧客満足度を向上させることができます。具体的には、以下が挙げられるでしょう。

顧客対応の迅速化・正確化高度な自動応答システムの導入で対応が正確かつ素早くなる
オペレーターの負荷軽減オペレーターの質が高まり顧客対応の質も向上する
感情の読み取り顧客の声から感情を読み取り適切に対応できる
問い合わせ内容の分析商品やサービスを改善できる
エラー率や待ち呼の低下顧客対応の信頼性が向上する

利用者の負担軽減に加えて、顧客対応の効率が高まることでサービス全体の質が高まります。これにより、顧客満足度を多くの側面から向上できることが期待できるでしょう。

顧客データの分析

音声認識の導入によって、顧客データの分析が大幅に向上します。顧客との会話内容を自動的に文字起こしすることで、業務負担を減らしながら膨大なデータ収集を実現できるためです。

分析の精度が向上し、必要なワードや情報の抽出が可能となり、細かなデータ分析や顧客分析を行うことも可能となります。新しいニーズや知見を発見できるため、商品開発やマーケティングにおいて効果を実感しやすくなるでしょう。

音声認識を利活用できる事例・シーン

音声認識では、以下の事例・シーンで利活用できます。

自動応答システム顧客の発話内容を認識して適切な対応を実現する
顧客情報の取得氏名や住所などの情報を自動的に取得する
問題解決問題点を特定して適切な解決策を提供する
トレーニング発話内容を解析してトレーニングに役立てる
品質管理通話内容を解析して品質管理を実現する

商品の問い合わせに対しては、在庫状況や価格などの情報を自動的に提供できます。問題解決においては、不良品の問い合わせに対して返品手続きの案内や、修理依頼の受付などを自動的に行うといった形です。

このように音声認識技術は、顧客満足度の向上や業務効率化に大きな効果を発揮することが見込まれ、今後においても注目度が高まる見込みです。

音声認識サービスを導入する流れ

音声認識サービスを導入する流れは、以下のとおりです。

  1. 利用したい音声認識サービスを探して選ぶ
  2. 録音環境を必要に応じて整備する
  3. 音声認識を実行して業務に役立てる

 

自社の業務に合った機能や価格帯、利用方法などを比較検討し、最適なサービスを選びましょう。

次に音声認識には、クリアな音声が必要ですので、マイクやスピーカーの品質にも注意が必要です。また、騒音やエコーの影響を受けないよう、静かな場所を選びます。

そして、選んだサービスを使って音声認識を実行します。初めての場合は、サービスの使い方や設定方法を確認し、トレーニングを行うことが大切です。最後に、業務の中で音声認識を活用し、改善を行いましょう。

【事例】コールセンター向けのAI音声認識サービス

AI音声認識サービスとは、AI機能を活用しコールセンターで対応する音声をテキスト化し対応履歴の作成や通話内容の分析を半自動化するサービスです。

また、問い合わせ内容を自動メッセージで振り分ける「IVR機能」を進化させ、顧客からの質問に音声で回答することもできます。 コールセンターが抱える人員不足の解消や工数の削減を可能にするツールとして多くの企業が導入し、業務の効率化に役立っています。

<関連記事>

ボイスボットとは?IVRとの違いやメリット・デメリット、活用事例などを紹介

コールセンターの応対品質や運営体制に関する課題

コールセンターが抱える問題には主に「応答率の確保」「顧客満足度向上」が上げられます。 この問題を解決するには、人員の確保や膨大なデータを分析する必要があり、工数の確保が課題です。

人手不足

コールセンターの年間離職率をみると、10%以下は32.3%、11~30%は22.7%で、慢性的な人員不足に陥っています。(コールセンター白書2019より)

特に新人の定着率は低く、研修期間中の離職や1年未満に離職する確率は30%以上といわれ、人材育成も難しい状況です。

以前は時給が高い部類に入る職種でしたが、近年は他業種の時給相場も上がっており採用状況も厳しくなっています。 一般的な電話応対スキルに加え、クレーム対応や休日、夜間対応も求められ、対応できる人材の確保が課題です。

満足度の高い顧客対応が求められる

顧客から求められるサービスの質は年々高まり、それに伴い企業やオペレーターに求められる応対品質も上がってきています

顧客は商品の品質だけでなく、アフターフォローやコールセンターの対応を含めて企業を選ぶようになってきたのです。

また、SNSによる口コミの影響も大きく、コールセンターの対応が世界中に共有されるようになると、場合によってはマスコミを通じて謝罪や休業対応に追われる可能性もあるため、オペレーターのスキルアップや応対チェックの頻度を上げることが求められています。

データ蓄積・分析が必要

高い顧客満足を得るためには、顧客の求める商品やサービスの提供、顧客の不満を取り除く仕組みが必要です。 コールセンターには多くの「お客さまの声」が集まるので、このデータを蓄積、分析してサービスに活かしています。

しかし、コールセンターに集まる要望は「声」によるデータのため、集約し分析するにはテキスト化が必須にもかかわらず、この作業には膨大な工数がかかり管理者の手も回らない状況です。

オペレーターの質問に答えたりクレーム対応をこなしたりする中で、数百〜数千件のデータから有益な情報を抽出するには、人力では限界があり大きな課題となっています。

AI音声認識サービスをコールセンターに導入するメリット

AI音声認識サービスはオペレーターや管理者の工数を減らし、人員不足や顧客満足向上に役立つメリットがあります。

  • オペレーターの負担を軽減できる
  • オペレーターの離職率を低下させる
  • 後から振り返って課題が見つかりやすい
  • 顧客の本音のデータが蓄積され、分析に回せる

オペレーターの負担を軽減できる

顧客対応の内容は、オペレーターが内容を要約しテキスト化して履歴を残していますが、重要なことを漏らさず必要ないことは省略するといった判断には個人差があります。

正しく履歴を残すには、顧客と会話しながら同時にタイピングをする必要があるため、スキルの低いオペレーターにはかなりの負担です。

AI音声認識のツールを使えば、自動で対応内容を要約しテキスト化されるので、オペレーターは顧客との会話に集中することができ、負担が減るだけでなく質の高い応対を提供できます。

<関連記事>

カスタマーサポートを自動化する方法とは?サービスやツールを紹介

オペレーターの離職率を低下させる

コールセンターの離職理由は、教育やフォロー体制の不十分さや、クレーム対応の精神的苦痛が代表的です。

AI音声認識サービスを導入すれば、顧客やオペレーターの声色やNGワードの出現を「応対中にキャッチ」し、管理者にアラートを出すことでクレームの早期発見につながります。 

早めにフォローに入ることにより、顧客の怒りや不満を鎮めるだけでなく、適切な解決方法や提案ができるため、オペレーターの精神的負担が減り離職防止につながるのです。

後から振り返って課題が見つかりやすい

センターが正しく運営されているかを確認するには、オペレーターの実音源を聞き、案内漏れやコンプライアンスに違反するようなトークを用いていないかどうか定期的なチェックが必要です。

通話録音を聞いてのチェックは時間がかかり非効率ですし、聞き洩らしも発生しがちですが、AI音声認識サービスでテキスト化することによりオペレーターの特徴や問題点が発見しやすくなります。

顧客の本音のデータが蓄積され、分析に回せる

オペレーターが残す対応履歴は、要約した内容が記されているので「顧客の生の声」とは少しニュアンスが異なり、本音が正しく反映されていないことがあります。

企業にとって顧客の生の声は、新たなサービス提供や既存サービスの改善に役立つ最も重要なデータなので、できる限り実音声に忠実なテキスト化が望ましいのですが、オペレーターによって記録の残し方はどうしてもバラツキが出てしまい正確に分析できません。

AI音声認識で顧客の声をダイレクトに集約することで、顧客の本音や対応履歴では伝わらなかった微妙な表現が蓄積され、マーケティングに役立つ情報収集と分析が可能になるのです。

AI音声認識サービスのデメリット・注意点

AI音声認識サービスのデメリット・注意点は、以下のような環境や状況によって精度が低下することです。

  • 騒がしいカフェや電車内などの雑音やノイズが多い環境
  • 文全体の意味やニュアンスを理解しきれないことがある
  • 文章の流れを重視した自然な言葉に対応できないことがある

 

必ずしもこの限りではありませんが、日本語は独特な表現やニュアンスを含めた言葉が多く存在するため、継続したデータの累積等によって精度へアプローチする必要があります。そのため、できるだけ必要に応じてその業界に特化したサービスを選びましょう。

音声認識サービスのボイスボットで業務効率化

AI音声認識サービスには、音声をテキスト化するだけでなく、認識した音声の内容に応答することもできます。

ボイスボットとは

ボイスボットは、AIを搭載した音声認識機能により音声をテキスト化し、内容を分析した結果から回答を導き出し、合成された音声で応答する仕組みです。

認識の精度は機能学習によりデータが蓄積されるごとに上がっていくので、顧客は「〇〇がしたい」「〇〇ができない」と、問い合わせ内容をオペレーターに話しかけるように伝えるだけで回答が返ってきます。

これまで人が対応していた内容も、定型的な質問であれば自動で対応できるので、人員不足の解消にも役立つシステムです。

ボイスボットの活用事例

予約の受付や変更、商品の受注、資料請求など定型的なやり取りには、多くの企業でボイスボットの導入が進んでいます。 顧客が予約状況や商品名を音声で伝えるだけで、空き情報や在庫確認を確認し対応するので、窓口の完全自動化も可能です。

ボイスボットで対応できない内容は、有人オペレーターへ誘導する「一次対応のボイスボット化」を取り入れている企業も増えています。

ボイスボットを導入すれば営業時間外対応も受付できるので、日中に時間の取れない顧客にも柔軟に対応でき、新規顧客を取りこぼさずに獲得できます。

まとめ

音声認識は人の声を機械的に解析し、テキスト化する技術です。コールセンターではお客様の声を自動的にテキスト化し、オペレーターの負担を軽減し効率的な応対を実現します。

AIを用いた音声認識は人工知能技術を応用して、音声データから話者が発する言葉を文字データに変換します。最も可能性の高い文字列を出力して精度を高められるため、従来のサービスよりも高度な分析にも役立つでしょう。

AI音声認識サービスの中でもボイスボットは導入しやすく、コールセンター業務を円滑に行うことができるので、まずは各社サービスを比較し企業形態や環境に合わせたサービスを取り入れてみてください。

関連資料

3分で分かるAI Messenger Voicebot

ボイスボット事例集

AI Messenger Voicebot機能紹介