2021/09/24

DX推進で解決すべき3つの重要課題|問題点や状況・解決策を詳しく解説

DX推進で解決すべき3つの重要課題|問題点や状況・解決策を詳しく解説

DXの推進が多くの企業で行われている中、それにともなって課題も浮き彫りになりつつあります。例えば、人材やスキルの不足だけに限らず、目に見えて効果を実感できないことで進捗が芳しくないといったことも挙げられているのが実情です。

本記事では、DX推進で解決すべき3つの重要課題とその解決策を解説します。加えて、同時に発生しやすい8つの問題点にも触れ、どういった取り組みが必要となるのかを具体的にお伝えするため、ぜひ最後までご一読ください。

DXとは

さまざまな業種や分野で「DX」という言葉が使われるようになりましたが、そもそもこのDXとはいったいどのようなことなのでしょうか?

ここでは定義やDXが求められる理由について解説します。

DXの定義

DXとはデジタルトランスフォーメーションのことで、経済産業省のDX推進ガイドラインには「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

DXはIT化と混同されがちですが、「テクノロジーを活用した既存事業の効率化を図ること」がIT化なのに対し、DXは「テクノロジーを活用した業務プロセス自体の変革、製品・サービスや事業・経営の変革のこと」を指します。

DXが求められている理由

2018年経済産業省が発表した「DXレポート:ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開」の中で、もしDXが実現されなければ2025年以降には最大で年間12兆円の経済損失が生じてしまい、逆に実現すれば2030年に実質GDPが130兆円を超えると予測されているからです。

また、技術発展により多くのテクノロジー企業が競争優位性を増しており、中小企業はもちろん大企業でさえも、データ活用やデジタル技術による変革の必要性に迫られているからです。

国土交通省も2020年10月に建設業のデジタル変革「インフラDX」として動き出しています。

業種別に見るDXの取り組み状況

DX白書2023年の調査によると、業種別に見るDXの取り組み状況はさまざまであることが分かりました。2018〜2020年度から実施している割合を見ると、医療・福祉においては「9.3%」と低く、情報通信業では「51.0%」と高い数値が読み取れます。

参考:DX白書2023 第2部 国内産業におけるDXの取組状況の俯瞰

ただ、医療・福祉においてもDXの重要性が高まっており、今後は取り組む企業が増えることが期待されます。例えば、AIを活用した診断支援システムや、IoTを活用した在宅医療サービスなど、医療・福祉分野でもDXを活用したサービスが増えているためです。

DXに取り組むことで業務効率化や顧客満足度の向上など、企業にとってもメリットがあります。そのため、今後ますます多くの企業がDXに取り組むことが予想されます。

規模によって変わるDXの課題

DXにおける課題は、企業の規模によって異なります。従業員規模20人「以下」では、予算の確保が最も大きな課題である一方で、従業員21人「以上」の企業ではDX人材の不足が41.8%と、従業員20人以下の企業よりも18.3ポイントも高い水準です。

ここからは、規模によって異なるDXの課題をDX白書2023に基づいて紹介します。

  • 従業員規模20人「以下」の課題
  • 従業員規模20人「以上」の課題

従業員規模20人「以下」の課題

従業員規模20人「以下」では、「予算の確保が難しい(26.4%)」という課題がありました。次に、「DXに関わる人材が足りない23.5%)」が続き、適切な人材の確保も課題の一つとなっています。

他にも、「具体的な効果や成果が見えない(24.3%)」、「何から始めてよいかわからない(22.8%)」という回答もあり、DXの推進において踏み出せなかったり、取り組みによる効果を実感できていなかったりすることもわかっています。

従業員規模21人「以上」の課題

従業員21人「以上」の企業では、「DXに関わる人材が足りない(41.8%)」「ITに関わる人材が足りない(33.4%)」と、従業員20人以下の企業より人材への課題が高い水準になっています。

また、「DXに取り組もうとする企業文化・風土がない(25.7%)」「具体的な効果や成果が見えない(23.8%)」と実施できていたとしても、推進の進捗が芳しくないことから、まずは基本的なITリテラシーの向上や、外部の専門家との協力などの活用が期待されます。

このように、従業員規模20人「以下」の企業と、21人以上の企業でDXに取り組む上での課題には、大きな違いがあることが明らかになっており、適切な対策を講じることが求められるでしょう。

当てはまりやすい日本のDXにおける8つの課題

日本企業におけるDXには、経営戦略の不透明性、IT人材不足、システム内部の不透明性、外注業者に依存、既存システムの負担、IT投資の不十分さ、部門間の意見の衝突、そして伝統的な文化といった8つの課題が存在します。

これらの課題を克服するためには、経営陣の意思決定力やIT人材の確保、内部プロセスの改善、新技術の採用、意見調整のプロセスの確立などが必要です。

ここからは、先に列挙した以下の各課題についてそれぞれ詳しく紹介します。

  • 経営戦略が不透明
  • 社内外でIT人材不足
  • システム内部の不透明性
  • 外注業者に依存している
  • 既存システムの負担が重い
  • IT投資がうまくいっていない
  • 部門間の意見の衝突
  • 日本企業の伝統的な文化

経営戦略が不透明

Xは既存事業の効率化を図るものではなく、業務の工程や事業自体だけでなく経営全般に及ぶ変革であるため経営戦略が不可欠です。

しかし多くの企業では、デジタル戦略は模索されているもののDXの必要性が認識されるにとどまっており、どのようにビジネスを変革させるのかといった具体的な検討がされていないことも多いです。

例えば、企業全体の目的がないまま「AI技術で何か開発できないか」といった指示のみが出されているという現状です。

<関連記事>

オムニチャネル化によくある3つの課題|3つの成功例も紹介

社内外でIT人材不足

DXを推進するためには既存システムを含めた見直しが重要です。しかし、既存システムの開発や運用について熟知した人材を社内に確保できていないことがDX推進を阻害しています。

また、日本ではIT需要が高まっているものの、少子高齢化による労働力不足のため今後ますますIT人材が不足してしまうことも予測されています。

そのため、IT人材を社内ではなく外部から集めようとしても企業間競争が厳しいためうまく採用できないのです。

システム内部の不透明性

時代に適していない古いシステムを今も利用している企業では、自社システムがブラックボックス化してしまっています。

システム内部が不透明であると運用管理費の増大やシステム障害対応の遅れが発生し、さらにはIT投資を戦略的に行えないことによるさまざまな問題点まで発生してしまいます。

外注業者に依存している

システムを利用する企業が、外注業者にシステムの開発や運用を任せていることがよくあります。

業務がスムーズに進められ、作業効率が向上するという側面からはメリットもありますが、これでは社内にITスキルの高い人材が育ちません。

DXについても社内ノウハウが蓄積されづらく急な対応にも時間がかかってしまうため、外注業者への過度な依存も課題の一つであるといえます。

既存システムの負担が重い

既存システムの負担が重く、次のようにDX推進を妨げているケースもあります。

  • 「文書ファイルが整備されていないため、調査確認に時間がかかる」
  • 「古いシステムとのデータ連携が難しい」
  • 「テスト運行したいが影響が多岐に渡る」

 

そして、古いシステムから脱却できずに資金や人材を割いてしまうため、DX推進が困難になってしまいます。

IT投資がうまくいっていない

アメリカではITを活用した製品・サービス開発やビジネスモデル変革などへの投資が積極的に行われています。

一方の日本では、既存システムを用いながら業務効率化やコスト削減といった保守的な投資が多いことが特徴となっています。

経済産業省のまとめでは、既存システムの老朽化を課題として掲げる企業が約8割にものぼり、約7割の企業がそれをDX推進の妨げになっている要因として挙げています。

このように日本の場合、IT投資の内容自体も改善する必要があるのです。

部門間の意見の衝突

全体最適化を考慮したIT投資がなされている企業は比較的DXをスムーズに行えるでしょう。

しかし、各部門によってシステムやツールが個別最適化されている企業では部門間の軋轢が生じ、反対意見も出てくることからDXがなかなか進まない場合があります。

事業戦略のもとでDXを推進するとこのような部門間の意見の衝突が生まれてしまうため、明確な経営戦略を全体に浸透させる必要があります。

日本企業の伝統的な文化

伝統的な日本企業は縦割り文化がいまだ根付いています

全体最適化を推進したくても各部門が抵抗勢力となり、部門をまたいで取り組むDX推進が阻まれるといったことも起こります。

また、DXは職務内容やその評価基準がそれまでとは一新されることもあるため、年功序列的な考えを持つ方から強い反発も起こり得ます。

さらに、デジタルリテラシーの高い若手社員がリーダーとして抜擢されたとしても、年功序列意識が残る社内ではその力を発揮しづらいなどの問題点もあるでしょう。

DX推進で見逃せない3つの課題

参考:特別企画 :DX推進に関する企業の意識調査(2022年9月)

※調査期間は2022年9月15日~9月30日、調査対象は全国2万6,494社で、有効回答企業数は1万1,621社(回答率43.9%)

DX推進において、企業が直面する課題は多岐にわたりますが、中でも重要な以下に挙げた3つの課題について考えましょう。

  • 人材の不足
  • スキルの不足
  • 時間・費用の不足

 

2022年10月公開の帝国データバンクによる調査も参考に、それぞれ解説します。

人材の不足

DXにおける1つ目の重要な課題が、人材の不足です。帝国データバンクの調査によると、「対応できる人材がいない(47.4%)」と高い水準を示している結果となっています。

特に、若い世代の人材は、IT企業やスタートアップ企業などに人気が集中しているため、大手企業などのDX推進に必要な人材が確保できないという問題は、早急な解決に動きだす必要があるでしょう。

スキルの不足

同調査において、人的リソースを確保できている場合においても「必要なスキルやノウハウがない(43.6%)」という課題も浮き彫りになりました。

IT技術やデータ分析、プロジェクトマネジメントなどの専門的なスキルだけでなく、コミュニケーション能力や問題解決能力などのビジネススキルも必要です。

しかし、これらのスキルを持つ人材が不足している背景に現状に加えて、長年同じ業務を続けてきた従業員にとって、新しいスキルを習得することは容易でありません。

時間・費用の不足

DXの課題では、「対応する時間が確保できない(33.3%)」「対応する費用が確保できない(27.5%)」などの時間・費用の不足も挙げられます。

システムの導入やデータの収集・分析、新しいビジネスモデルの開発など、多くの作業が必要であり、それらには多額の費用がかかります。また、DX推進に必要な人材を確保するためにも、多くの時間と費用が必要です。

多くの企業は時間や費用の不足により、DX推進を進められないという課題に直面しています。

DX課題の解消に必須となる3つの解決策

ここまで紹介したDX課題の解消に必要となる3つの解決策は、以下のとおりです。

  • DXを担うIT人材の確保・育成を行う
  • リスキリングを推進・支援する
  • コストを削減する

 

人材の確保・育成のためにリスキリングを推進・支援し、そこに充てる資金をコスト削減によって調達するといった形で、いずれも関連性が高く同時に推進することが求められます。

DXを担うIT人材の確保・育成を行う

DXを推進するためにIT人材の採用や育成を積極的に行うようにしましょう。社内でDXを実現するためには、明確なビジョンを描き組織においてリーダーシップを取りながら自ら実践できる人材が必要です。

また、新しい技術や知識をどん欲に取り入れようとする人材のために、学習・研修システムの導入や専門性を評価する仕組みを構築することも大切になります。

リスキリングを推進・支援する

参考:特別企画 :DX推進に関する企業の意識調査(2022年9月)

※調査期間は2022年9月15日~9月30日、調査対象は全国2万6,494社で、有効回答企業数は1万1,621社(回答率43.9%)

2022年10月実施の帝国データバンクの調査によると、リスキリング(職業能力の再開発、再教育のこと)に取り組む企業が「何らかの取り組みを1つ以上実施している企業(48.1%)」と半数近くとなっていることがわかっています。

主に「デジタルツールの学習(48.4%)」や経営層による「新しいスキルの学習・把握(38.6%)」が挙げられ、「従業員のデジタルスキルの把握、可視化(32.3%)」も実施されています。

DX白書2023から、従業員数20名以上において「具体的な効果や成果が見えない(23.8%)」があったことを踏まえると、より積極的に取り組む必要があるでしょう。

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」として国の公的支援も受けられるため、積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

参考:令和4年度補正予算「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に係る事務局の公募について

参考:DX白書2023 第2部 国内産業におけるDXの取組状況の俯瞰

コストを削減する

DXの課題解決には、時間・費用を捻出するためのコスト削減も必要です。この背景には、事業を進める予算があったとしても、DXに向けて投資できる大きな金額を用意できないことが考えられます。

そのため、社内DXとして部分的なプロセスを小さくデジタル化・IT化して業務効率を改善し、コスト削減を実現しつつ予算を用意する必要があるでしょう。

  • 自動音声応答システムの導入やAIチャットボットの活用
  • CRMシステムの導入

 

などの取り組みによりコストを削減し、得られたリソースを活用してさらにシステムの改善や新しい技術の導入を進めるという形で好循環を作り出しましょう。

並行して実施したいDXにおける課題の解決策

ここまで解説してきたように、日本企業ではDX推進にさまざまな課題があります。

では、どのようにして解決していけばよいのでしょうか。具体的に解説します。

経営層がDXで目指す姿を共有する

経営層が経営戦略に基づいてDXで目指す姿を定め、ガイドラインを策定し、企業全体で共有化することが解決策となります。

経営層がDXに対してのビジョンが描けない場合は、コンサル会社などの外部業者に依頼し、ガイドラインを策定してもよいでしょう。

経済産業省も「デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかについての経営戦略や経営者による強いコミットメント、それを実行する上でのマインドセットの変革を含めた企業組織内の仕組みや体制の構築等が不可欠である」としています。

既存のITシステムの全体像を把握する

まず、既存のITシステムがどのように機能しているのかといった全体像を把握することが大切です。そして順次、既存ITシステムを刷新し、積極的にクラウド活用することが解決策となります。

頻繁に修繕や変更が必要な機能はできるだけスピーディーにクラウド上に移行しましょう。これは保守費用がすぐに軽減できるからです。

また、不要な機能は捨て去り、重要部分だけを情報整理しながらクラウドに移行するとよいでしょう。

DX専門の部署を設ける

DX専門の部署やプロジェクトチームを作り、各部門からの協力体制が得られるようにしましょう。

その際、この専門部署やプロジェクトチームが各部署の現状や要望をきちんとヒアリングし、DX推進のための計画や施策をシェアすることが重要になります。

万が一問題が発生した場合は、全社で所有するデータプラットフォームをつくり全体最適化しても不具合が生じないような仕組みをつくる必要があります。

ベンダーに丸投げしない

自社にとってもベンダーにとっても、DX実現に向けた大規模なシステム刷新は高いリスクを伴います。

そのため、すべてをベンダーに丸投げするのはプレッシャーとなり、ベンダーのモチベーション低下につながる危険もあるので避けましょう。

また、上下関係ではなくパートナー関係構築、プロフィットシェアがなされるようなルール作成、トラブルが発生した場合の解決時間短縮や裁判外紛争解決手続の活用など、事前に両社での取り決めを明確にすることも重要です。

人材の多様性を確保する

DXは企業全体を変革する取り組みになります。

変革には、新たな知識を求める行為とすでに所有する知識をそのまま活用する行為をバランスよく取り入れる必要があり、特に、新たな知識を求める行為を怠らないことが重要とされています。

この新たな知識を求める行為を効果的に行うためには、人材の多様性を確保することがカギとなります。

同じようなスキルや経験を持つ者ばかりでなく、若手や外国人、女性などの意見を積極的に取り入れることが効果的です。

ITツールを導入する

既存のITシステムのうち、頻繁に変更を伴うような機能はクラウド上で再構築することが必要です。

また、新たなITツール導入によりこれまで蓄積した顧客データを収集することで、製品・サービスのさらなる品質向上も望めます。

例えば電話応対では、蓄積データを分析しAIが顧客との受け答えを行うボイスボットの導入はおすすめです。

<関連記事>

コールセンター業界が抱える課題と解決するための3ステップを紹介

【事例】コールセンターにおけるDXの課題解決

コールセンターにおけるDXの課題解決の事例は、以下が挙げられます。

保険金請求受付の自動化顧客満足度向上とオペレーターの応対工数削減に貢献
24時間365日の電話応対自動化ユーザビリティの向上に貢献〜AIボイスボットとオペレーターのハイブリット活用〜
営業時間外のよくある質問にボイスボットが自動で応答さらなるユーザビリティの向上とオペレーターの工数削減を目的
ボイスボットとチャットボットの同時導入幅広い問い合わせの自動化で、お客様のサポート体制拡充へ貢献
トランクルーム予約の電話応対の自動化顧客満足度向上と電話応対の工数削減に貢献
家賃滞納者に対する督促架電の自動化毎月約5,000回の架電件数増加に成功

ボイスボットとチャットボットを同時に導入することで、よりスムーズな問い合わせが可能です。コールセンターのオペレーターが行う業務を減らし、効率化できればコスト削減にもつながります。

コールセンターにおけるDXは、顧客サービスの向上だけでなく、コスト削減にもつながる効果があるため積極的にIT化・デジタル化を取り入れましょう。

まとめ

DXの課題には、人材やスキルの不足に加えて、時間・費用も足りていない実情があります。そのほかにも以下は問題として取り上げられやすく、解決策を用意する必要があります。

  • 経営戦略が不透明
  • 社内外でIT人材不足
  • システム内部の不透明性
  • 外注業者に依存している
  • 既存システムの負担が重い
  • IT投資がうまくいっていない
  • 部門間の意見の衝突
  • 日本企業の伝統的な文化

 

コールセンターのDXでは、ボイスボットとチャットボットなどのIT技術を使った業務効率化やコスト削減も検討しましょう。人件費削減だけに限らず、顧客満足度を高められるなど多くの利点があるため、ぜひチェックしてみてください。

関連資料

3分で分かるAI Messenger Voicebot

ボイスボット事例集

AI Messenger Voicebot機能紹介