コールセンターのコスト削減において注目される人件費ですが、実際に削減へ動きだすとオペレーターへの負担が増加するなどによって応対品質が低下し、クレーム等につながることがあります。しかし、注文受付や商品の説明、不具合報告など企業にとってなくてはならない存在であるものの、コストがかかるのも実情です。
本記事では、コールセンターのコスト削減の指標や具体的な方法を解説します。また、人手不足を解消しつつコスト削減を狙えるAI技術にも触れますので、ぜひ最後までご一読ください。
コールセンターのコストの内訳は人件費が大半
コールセンターのコストの内訳を見てみると、大半を占めるのは人件費です。運営を続ける限り、この費用は発生し続けます。
しかし、職場環境が悪化すると定着率も下がり、さらに人手不足を引き起こす悪循環が生まれるため、コスト削減に賃下げ等を行うのは避けたいところです。人を減らしても運営できる仕組み作りや、給与が下がっても働きたいと思える職場作りを実施しましょう。
人を減らしても運営できる仕組み作りや、給与が下がっても働きたいと思える職場作りが必要です。
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CPC(Cost Per Call)が指標
CPC(Cost Per Call)は、1回の電話対応にかかる費用を調べられるため、コスト削減の指標として利用できます。例えば、電話対応の時間を短縮したり、オペレーターに研修を実施したりするなど、効率を高めることでCPCは下がります。
効率を高めるためには、オペレーターの研修やトレーニング、顧客情報の正確な管理、自動応答システムの導入など、様々な施策が考えられるでしょう。
コールセンターにおけるコスト削減のメリット
コールセンターにおけるコストを削減するメリットは、以下が挙げられます。
- 問い合わせ件数の削減
- 問い合わせ時間の削減
- 負荷の軽減
- 離職率の増加を軽減
ここでのコストとは、人件費以外を指します。
コストを削減する方法とメリットについて順に解説します。
問い合わせ件数の削減
コールセンターで有人対応が必要な問い合わせを減らすと、少ない人数で運営でき、コスト削減につながります。緊急ではない問い合わせをメール窓口に案内したり、FAQを整備したりするなどが例として挙げられます。
加えて、AI技術を用いたチャットボットで自動応答を実現するといったことも有効な手段でしょう。場合によっては、業務の効率化と応対品質を向上できた結果、顧客満足度も高められる効果も期待できます。
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問い合わせ時間の削減
コールセンターでは、問い合わせ1件あたりの対応時間を短縮することもコスト削減に効果的です。対応する時間を短縮できれば、オペレーターがより多くの問い合わせに対応でき、業務全体の生産性も向上できます。
問いあわせ時間を削減するためには、オペレーターの対応能力を一定水準まで上げることが一般的ですが、そのためにはマニュアルの整備が必要です。その他にも、自動応答システムやFAQシステムを導入し、一部の問い合わせ対応の自動化することも問いあわせ時間の削減に繋がります。
負荷の軽減
効率よく快適に働ける職場環境を整備し、オペレーターにかかる負荷の軽減も検討します。また、悪質かつ迷惑なクレーマーには、熟練のオペレーターへ割り振るといった対応も効果的です。
また、チャットボットやボイスボットなどで、有人対応しなくても顧客の問題解決ができる仕組みを整えれば、オペレーターが対応する件数そのものを減らせます。
問題をそのままにしない環境作りは、オペレーターの定着率を高めて、人材の成長も期待できるでしょう。
離職率の増加を軽減
離職率の増加を低減すると、採用や教育にかかるコストを削減できます。加えて、応対品質の安定化や向上も期待できるでしょう。
スキルや知識の獲得には研修やトレーニングを実施し、社内でのサポート体制を充実させることなどが具体例として挙げられます。
また、適切な評価によるやりがいの向上と、短時間勤務やフレックスなどの柔軟な働き方を取り入れるといったことも選択肢として選べます。
コールセンターのコスト削減方法
コールセンターの費用削減について紹介しましたが、ここからは人件費以外を含むコストの具体的な削減方法について取り上げます。 具体的なコスト削減方法としては、業務の効率化や離職率を下げる取り組み、人件費以外のコストカットがあります。
システムやAIの導入で業務を効率化する
コールセンターのコスト削減方法として、業務の効率化が挙げられます。オペレーターの対応を補助し、負担を軽減するシステム導入ができれば、対応効率も上がるでしょう。
短時間かつ少人数でも、高品質な電話対応が可能になれば、コスト削減になります。
ボイスボットの導入
音声認識や自然言語処理といった、AI技術を使ったボイスボットは、コールセンターの業務を助ける存在です。
ボイスボットが顧客の発声から問い合わせ内容を識別し、適切な窓口に取り次ぐことで、一次対応の負担を軽減。簡単な内容はボイスボットが回答し、個別対応が必要なものだけオペレーターによって対応すれば、少人数でも効率よく運営できます。
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チャットボットの導入
企業のホームページ上に、チャットボットを設置するのも、業務効率化に有効な手段。 顧客が表示される選択肢を選んだり、問い合わせ内容を入力したりすると、該当する解決方法をチャットボットが提示してくれます。
顧客側もコールセンターに電話を掛けるよりも気軽に使え、電話が繋がらないといったストレスもありません。 導入事例も多く、最近では企業のイメージキャラクターが答えてくれるような演出で、親しみやすいチャットボットを設置しているところもあります。
IVRを活用する
IVR(自動音声応答システム)によって、受電の一次対応ができれば、オペレーターの負担を減らせます。
- 問い合わせ内容を振り分けたうえで取り次ぐ
- コールセンターで対応できない内容は別の窓口を案内する
- 顧客が呼び出しで待たされる時間を短縮できる
オペレーター対応が必要な問い合わせ内容を振り分けられれば、スムーズな対応が可能です。顧客側も、コールセンターが繋がりにくいといったストレスを感じにくくなるでしょう。
音声認識サービスを利用する
受電内容を音声認識し、オペレーターの対応をサポートするシステムもあります。 通話内容が文字に書き起こされれば、対応の記録を自動化できます。
内容を判別し、関連するトークスクリプトやFAQを自動参照させると、経験の浅いオペレーターでも的確な対応ができるでしょう。 声の大きさや調子などから、クレーム通話のパターンを抽出し、トラブル回避に役立つシステムもあります。
対応マニュアルをアップデートする
ほとんどのコールセンターでは、オペレーター用の対応マニュアルを用意しているでしょう。
しかし、内容のアップデートをしていなければ、マニュアルが活用されません。 内容を定期的に見直し、トークスクリプトの改善や対応事例、新しい商品情報などを反映させましょう。 実際に使用するオペレーター側の意見も取り入れ、使いやすいものにしていく工夫が必要です。
FAQを充実させる
企業ホームページに掲載するFAQ情報を充実させることで、顧客がコールセンターに電話する件数も減るでしょう。 FAQは回答項目を増やすだけでなく、顧客が必要とする情報にすぐたどり着けるよう、見やすいページ作りも重要です。
FAQが充実すれば、顧客が自己解決できるケースも増え、電話での問い合わせ件数も減らせます。顧客満足度の向上にもなり、オペレーターの負担や人件費の軽減になるでしょう。
オペレーターの離職率を下げる
コールセンターは離職率の高い職場ですが、辞めずに定着してくれる人材が増えれば、コストカットにつながります。 離職率の高い状態が続くと、常に採用コストがかかりオペレーターは成長しません。余計なコストがかかっていることになります。
- 教育制度やサポート体制を整える
- 適切な評価でオペレーターのモチベーションを上げる
- 短時間勤務やフレックス勤務など柔軟な働き方を認める
このような環境・制度を整えることで、長く働きたいと思うオペレーターが増えれば、コスト削減になるでしょう。
通話料金プランを見直す
コスト削減には人件費だけでなく、通話料金に目を向けるのも重要です。 料金設定は3分単位であったり、秒単位であったりと、プランによって異なります。
もし、1回の通話において3分以内で終わることが多いのであれば、秒単位のプランのほうが安く済む場合もあるでしょう。 契約当初と状況が変化し、最適なプランが変わっていることもあります。 通信会社の乗り換えやプラン変更を検討し、コストカットできないか考えてみましょう。
外注を行う
自社にコールセンターを設置し、オペレーターを採用するより、外注したほうが安く済むこともあります。 開設にかかる費用はもちろん、通信費やオペレーターの人件費を節約し、コールセンターが必要な期間だけの利用も可能です。
コールセンターの外注を請け負う会社は、オペレーターの教育ノウハウも持っているので、最初から高品質な電話対応も期待できます。
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リモート化を推進する
コールセンターをリモート化できれば、地代やオフィス代を削減できます。例えば、以下のツールを活用したリモート化が例として挙げられます。
クラウドCTI | 顧客情報を管理するCRMと電話システムを連携 |
クラウドPBX | 電話交換機の機能をクラウド上で提供 |
また、福岡市が実施しているような賃料への助成制度を使うといったこともできるでしょう。人材にかかる費用ではなく、経費を減らしてコスト削減を実現する方法にも目を向けてみてください。
コールセンターのコスト削減における注意点
コールセンターのコスト削減では、以下の点に注意しましょう。
- コスト削減だけを目的にしない
- CPCの指標だけをメインにしない
コスト削減だけを目的にすると、オペレーターが働く環境が悪化し、離職率を高めてしまう可能性があります。同様に、CPCの指標だけをメインにすると、現場で働くオペレーターの要望等を反映できず、環境の悪化を引き起こします。
快適な職場環境を整備しながら、業務プロセスの見直しや自動応答システムの導入など、業務全体に目を向けてコストを削減しましょう。
コールセンターでコストを削減した事例
コールセンターでチャットボットを導入し、コスト削減に成功した事例を2つ紹介します。
企業名 | 株式会社加瀬倉庫 | 株式会社ナリコマエンタープライズ |
課題 | 慢性的な人手不足による電話応対の工数逼迫で電話が受けきれず、顧客満足度の低下に繋がる懸念 | 営業時間外のお問い合わせに対応できず、お客様満足度の低下に繋がる懸念 |
選定理由 | システムとの連携により、トランクルームの空き状況の照会から仮予約までをボイスボットによる完全自動化が可能なため | 営業時間外のお問い合わせ業務を低コストで実現でき、円滑な後続対応が可能なため |
効果 | 完全自動化による電話応対の工数削減と、FAQでの即時解決による顧客満足度向上 | 人とVoicebotの協業により低コストで24時間対応を実現 |
株式会社加瀬倉庫では、トランクルーム予約の電話応対において、自動化を導入することで顧客満足度向上と電話応対の工数削減に貢献しました。これにより、完全自動化による電話応対の工数削減と、FAQでの即時解決による顧客満足度向上を実現しています。
株式会社ナリコマエンタープライズでは、営業時間外の一次受付対応について自動化を導入することでお客様満足度向上と人件費の50%削減を実現しました。人とVoicebotの協業により低コストで24時間対応を実現しています。
コールセンターのコスト削減にはボイスボットもおすすめ
コールセンターにかかる費用の大部分は人件費ですが、安易な賃下げや人数削減はおすすめできません。 コールセンターのコスト削減に、人件費を削りたいと考えるなら、業務の効率化を図った上で行いましょう。
短時間・少人数でも効率よくコールセンターを運営するには、ボイスボットやチャットボットなどの導入もおすすめです。他にも、対応マニュアルの見直しや、顧客の自己解決を促すFAQの設置、オペレーターの離職率を下げる取り組みも効果があります。
場合によっては電話の料金プランの見直しや、コールセンターを外注に切り替えるといった方法も検討しましょう。
まとめ
コールセンターのコスト削減では、その多くが人件費ばかりに目を向けてしまいます。しかし、業務プロセスの見直しによって効率化したり、AI技術を導入して自動化したりするなどによって、人件費以外のコストを削減する方法も大切です。
また、オペレーターの定着率を高める環境づくりとして、研修やマニュアルの整備、働き方改革も行いましょう。
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