近年、コールセンターの業務をアウトソーシングしている企業が急増しています。その背景には、業務効率化やリソース確保といった実務的な理由、およびコスト削減という費用的な理由があります。
さらに、アウトソーシングによって応対品質の向上やBCP対策にもつながるものです。今回は、コールセンター業務をアウトソーシングする際に気をつけるべきポイントについて解説します。
コールセンターのアウトソーシング会社の特徴を一覧で紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
コールセンター業務のアウトソーシングは2種類
コールセンター業務におけるアウトソーシングには、大きく分けて2種類の方式があります。
- 人員のみを外注業者から確保する方式
- 設備ごと外部に委託する方式
ここでは、それぞれの方式について詳しく解説します。
人員だけを確保する
この方式は、自社内の社員をオペレーターの人員に当てるのではなく、オペレーターのみ外部の業者に委託して運営するという仕組みです。
もともと企業内でコールセンター部門を保有している企業に当てはまります。
既に社内に電話設備が整っている場合には、設備ごと外部委託するよりも、オペレーターのみを外部委託する方が費用を抑えられます。
また、自社内でオペレーターが業務を行うため、情報共有もしやすい点が特徴です。
設備ごと委託する
もう一方の方式は、人員も含めてコールセンターの設備を全てアウトソーシングする方法です。
電話設備を含め、業務の運用や管理を専門事業者に代行してもらう方法で、アウトソース型とも呼ばれます。こちらの方式は、固定資産をなるべく保有しないようにする企業によく採用されます。
起業して間もないベンチャー企業などが例として挙げられるでしょう。設備が既に整っている外部事業者に委託するため、設備投資などの初期費用を削減できます。
コールセンター業務をアウトソーシングするメリット
この章では、コールセンター業務をアウトソーシングするメリットを6つの観点から解説します。
- コストを削減できる
- すばやく開設できる
- 24時間365日に対応できる
- 運用管理を簡易化できる
- 応対品質を向上できる
- BCP対策につながる
コストを削減できる
まず、コールセンター業務をアウトソーシングすることのメリットは、コストを削減できることです。
コールセンターの全ての業務を自社内で行うのには多額の固定資産が必要となり、さらに管理費もかかります。例えば、各種サーバーやセキュリティ機器、CRMに必要なツールなどの設備が必要になります。
これらを設置・管理するのは負担が大きいといえます。アウトソーシングすることにより、これらを設置・管理する費用やリソースが削減されます。
すばやく開設できる
コールセンター業務をアウトソーシングすると、コールセンター運営の経験豊富な社員がオペレーター業務を取り仕切るため、素早く自社に適した運営方法を取り入れられます。
さらに、業務を委託すると、オペレーターへの情報共有からお問い合わせ対応や運営に必要なマニュアルの作成まで全てサポートしてくれます。
そのため、自社で全ての業務を行うよりも非常にスピーディーにコールセンターを開設できるのです。
24時間365日に対応できる
自社の営業時間外でも、お客様の問い合わせ対応が可能になります。
ほとんどの企業では夜間や休日の電話受付を行っていませんが、コールセンターをアウトソーシングすると、24時間365日の対応ができます。
平日は仕事で忙しいという方でもお問い合わせできるため、利便性が高くなり、顧客満足度の向上にも効果的です。
さらに、コールセンターが自社内の設置のみだと、接続数がキャパシティを越える可能性を捨てきれませんが、外部委託することで電話の接続可能数を柔軟に調節できます。
それにより、一度に対応できる問い合わせ数が増えるでしょう。
運用管理を簡易化できる
アウトソーシングすることにより、コールセンターに必要な設備や業務の運用と管理が楽になります。
コールセンターに必要な設備は、電話機やセキュリティ機器の修理、電話回線やネット回線の工事などがあり、さらに継続的な管理が必要です。
このような管理にはある程度の人やリソースを割く必要がありますが、コールセンター業務をストソーシングすることにより、その手間がなくなります。
本業に集中できる社員が増え、企業内の生産性の向上も効果的です。
応対品質を向上できる
オペレーター業務を外部委託すると、十分な研修を受けたオペレーターがお客様の応対を行うため、応対品質が向上します。
経験豊富なオペレーターはトラブル対応にも慣れているため、慌てず丁寧に対応できます。
さらに、自社でオペレーターを教育する場合は多くの時間やリソースを割く必要がありますが、外部委託するとそれらを省けます。
コールセンターの印象は、お客様の自社に対する印象を大きく左右するため、オペレーター業務を外部委託することがおすすめです。
BCP対策につながる
コールセンターのアウトソーシングは、企業のリスクマネジメントに欠かせないBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)対策にも効果的です。
近年、コールセンターを複数の拠点に配置するマルチサイト運営は、リスクヘッジ策として導入されることも多いです。地震や豪雨などの災害時にもお客様の対応ができるように、コールセンターを保有する企業にとってBCP対策は重要です。
自社とは別の場所にコールセンター業務を委託することで、自社が災害の被害を受けた時にも機能が完全に停止することを防げます。
コールセンター業務をアウトソーシングするデメリット
コールセンターのアウトソーシングにはメリットがありますが、知っておくべきデメリットもあります。この章では、コールセンター業務をアウトソーシングするデメリットを3つの観点から解説します。
- 事前準備が必要となる
- ノウハウの蓄積が難しくなる
- 情報漏えいのリスクがある
事前準備が必要となる
コールセンター業務を外注化する時には、社内で引き継ぎを行うとき以上にしっかりと事前準備をする必要があります。
特に、アウトソーシングする業務の範囲を事前に決めておくことや、業務内容をマニュアル化しておくことが必要です。
問い合わせ内容ごとの初動対応を細かく設定したり、クレームを受けたときの対応ルールを
定めるなど、外注先と連携しながら準備をしましょう。
ほとんどの外注先では事前準備のサポートも十分に行ってくれるので、準備の段階から外注先と綿密なコミュニケーションが重要です。
ノウハウの蓄積が難しくなる
お客様のお問い合わせ対応は、お客様の声を聞く貴重な機会です。
しかし、コールセンター業務を全てアウトソーシングすると、リアルなお客様の声を聞けなくなってしまいます。その結果、お客様の声を自社サービスの改善に役立てるというノウハウを蓄積させるのが難しくなってしまいます。
お客様の声をサービス内容の改善に活かすためには、アンケート調査の実施やお客様と直接関わる機会を設けることを検討することがおすすめです。
情報漏えいのリスクがある
コールセンター業務をアウトソーシングした場合、少なからず情報漏えいのリスクがあります。お客様からのお問い合わせに対応する窓口では、自社商品やサービスの知識を持っていないと対応できません。
そのため、事前に自社の情報を共有する必要があり、情報漏えいのリスクにつながってしまいます。重要な情報の漏えいを防ぐための対策として、高度な知識を求められるようなお問い合わせは社員対応がおすすめです。
コールセンター業務のアウトソーシング先の選び方
アウトソーシングの外注先を決めるときは、安心して任せられる外注先を選ぶことが重要です。
信頼性の高い企業を選ぶために、過去の実績や導入事例を確認するようにしましょう。ただし、インターネット上の情報が必ずしも正しいわけではないので、実際に問い合わせて対応をチェックし、複数の会社を比較検討しましょう。
また、セキュリティレベルが高い外注先を選ぶことも重要です。プライバシーマーク制度のPマークや、ISIM認証バッジを取得している企業であるかの確認が最たる例です。
さらに、顧客情報や機密情報を共有することになるため、セキュリティ対策を事前に担当者に確認するようにしてください。もちろん、必要な費用やオペレーターの研修制度、BCP対策についても事前にしっかりチェックしましょう。
コールセンター業務をアウトソーシングする注意点
コールセンター業務をアウトソーシングする時には、気をつけなければならないポイントがあります。この章では、3つの観点から気をつけるポイントについて解説します。
- 意領域が異なる
- 料金だけで選ぶと失敗する
- 自社の体制次第ではコストを削減できない
得意領域が異なる
コールセンター業務は大きく分けると、顧客からの電話を受け付ける「インバウンド」と、こちらから電話をかける「アウトバウンド」の2種類があります。
インバウンド | アウトバウンド |
---|---|
カスタマーサポート | テレアポ |
問い合わせ対応 | 市場調査 |
商品受注 | イベント告知 |
その他顧客からの連絡対応 | その他企業からのアプローチ |
同じコールセンター業務でも、インバウンドとアウトバウンドで業務内容は大きく変わるため、外注先の会社によって得意領域も異なってきます。
インバウンド業務
顧客からの質問やクレームを受け付けるコールセンターなら、インバウンドの対応を得意とする会社を選ぶことがおすすめです。
専門的な知識が求められるお問い合わせが多い場合は、コールセンター業務を自社で行うのが良いでしょう。一方、簡単なお問い合わせが多い場合は、アウトソーシングするのがおすすめです。
通販の受付など、同じ内容の問い合わせに対応する際にはアウトソーシングが向いています。
アウトバウンド業務
テレアポやテレマーケティングなどのアウトバウンド業務は、アウトソーシングすることで、企業は費用や労働力を削減しながら多くの対象者にコンタクトできます。
また、顧客満足度調査やアンケート業務を行う場合などにも向いているでしょう。テレアポやテレマーケティングなど新規顧客開拓もアウトソーシングがおすすめです。
ただし、外部の企業が行う業務の品質を確保するために、企業として管理体制は整えておくようにしてください。
料金だけで選ぶと失敗する
コールセンター業務のアウトソーシングが増えている背景には、業務効率化という実務的な理由、コスト削減という費用的な理由があります。
どちらの理由にせよ、外注にかかる費用は安いに越したことはありません。しかし、費用だけで外注先を選ぶと失敗につながる危険性があります。
外注委託と内製化のどちらがコスト的に優れているのかは、導入先の企業によって異なります。
外注先を決めるときは、複数の会社に見積もりを依頼し、どのサービスが自社に適しているか比較・検討しましょう。
自社の体制次第ではコストを削減できない
コールセンター業務の外注化がコスト削減につながるかどうかは、自社の体制によって変わります。例えば、社内の多くの人員をコールセンター業務に充てている場合、アウトソーシングを導入すれば人件費や設備費を大幅にカットできます。
その一方、少数の対応でも間に合う場合、もともと人件費や設備費がそれほどかかっていないため、外注費用のほうがコストがかかることがあります。
現状のコストを踏まえて自社に適した方法を検討することが大切です。
コールセンター業務のアウトソーシング費用の目安
コールセンター業務をアウトソーシングするのにかかる初期費用は、1万〜5万円ほどです。これ以降定期的に払う料金については、月額固定型と従量課金型の二つの料金体系があります。
料金体系が月額固定型の場合は、月々の費用相場は3〜10万円程度です。一方、「受電件数×コール単価」によって算出される従量課金型の場合の費用相場は、1コールあたり300〜1,000円程度です。
しかし、コールセンター業務と一口にいっても、実際の業務内容はさまざまです。一般的にあまり見られない特殊な業務、専門的なスキルが求められる業務などを依頼する場合、外注費用も比例して高くなります。
費用体系など細かい部分が知りたい時には、候補の会社に直接問い合わせてみるのが確実かつスピーディーです。
【各社比較】コールセンターのアウトソーシング会社一覧
コールセンターのアウトソーシング会社を一覧で紹介します
また、後述しますがコールセンターをアウトソーシングせずに、ボイスボットを導入することで電話対応を自動化するという選択肢もあります。
ボイスボットを導入することで24時間365日対応できるだけでなく、業務効率化やコスト削減が可能です。
気になる方はぜひチェックしてみてください。
会社名 | 特徴 |
JBサービス | ・高品質な応対 ・オンサイトによる機器の保守、点検 |
ウィルオブ・ワーク | ・直雇用のオペレーターによる高品質な応対 ・在宅型委託サービス |
株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ | ・運営の再構築、業務改善のコンサル ・実績豊富 |
バディネット | ・インバウンド、アウトバウンドを問わない ・委託までスピード対応 |
ベルシステム24 | ・使用しやすい料金設定 ・定期的なモニタリング調査 |
りらいあコミュニケーションズ | ・データ基点による確かな品質 ・お客様とのコミュニケーションチャネルを一元管理 |
株式会社ジャストファイン | ・スピーディーな対応が可能 ・幅広い業種への導入実績あり |
株式会社TMJ | ・多言語対応可能 ・アウトバウンド業務の委託も可能 |
コールセンターのアウトソーシングは、会社によって製品の特徴が大きく異なります。
自社の課題解決のためにはどのようなAI機能が搭載された製品が適しているのかを明確にしてから各社の製品を比較しましょう。
コールセンター業務をアウトソーシングする以外の方法
業務の効率化やコスト削減のためには、コールセンター業務をアウトソーシングする以外の方法も有効です。この章では、アウトソーシング以外の3つの方法を解説します。
- 既存の業務体制を見直す
- 業務委託や派遣
- システムの導入
既存の業務体制を見直す
まず、自社業務を以下に挙げた3つの点から分析して見直しましょう。
- 業務の現状についての把握
- コア業務をノンコア業務の仕分け
- 現状の課題を特定
業務工数の例として、業務内容や業務の量、その処理にかかる時間、要員数などが挙げられます。また、業務の中でコアになっているものとなっていないものを分類し、力を入れるべき項目を洗い出します。
現状を把握・業務を分類したら、改善すべき事象があるか分析して課題を特定し、改善を継続してみてください。
業務委託や派遣
コールセンター業務を自社以外の人員に任せる場合、アウトソーシングだけではなく「業務委託」や「派遣」を利用するのも一考です。
これらは仕組みがよく似ていることもあって混同されがちですが、おもに運営体制や責任の所在に違いがあります。コールセンターを例として簡潔に説明すると、以下のとおりです。
設備 | 管理者 | オペレーター | |
---|---|---|---|
アウトソーシング | 外注先が手配する | 外注先が手配する | 外注先が手配する |
業務委託 | 自社 | 外注先が手配する | 外注先が手配する |
派遣 | 自社 | 自社 | 外注先が手配する |
このように業務委託・派遣はアウトソーシングに比べて外注先の手配分が少ないため、自社内でコールセンターの設備や管理者が足りているなら、検討する価値は高いといえるでしょう。
業務委託もしくは派遣の制度を活用して、正規雇用ではないオペレーターや管理者を増員し、なおかつ人員配置を最適化すれば、業務効率化やコスト削減を実現できる可能性もあります。
システムの導入
コールセンター業務を外注するのではなく、AI制御で動くシステムを導入して、人の手による対応を最小限に抑えるという方法もおすすめです。
特に注目すべきシステムとして「ボイスボット」「チャットボット」「IVR」の3種類が挙げられるので、そちらについても解説します。
ボイスボット
「ボイスボット」とは、音声認識や対話型AIの技術を使った電話応対自動化システムです。顧客から電話が来ると、あらかじめ設定されたシステムに沿って自動応答がスタートし、人間のオペレーターに代わってAIが電話応対したり、コールバックの予約を行ったりします。
また、AIだけで対応できない場合、自動的に担当部署へと転送してくれるため、顧客の要望をしっかりと満たすことが可能です。
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チャットボット
「チャットボット」とは、チャット形式による自動応対システムです。想定される質問とその回答をあらかじめ登録して応対する「シナリオ型」と、AIに学習機能を持たせて適切な回答を行う「AI(FAQ)型」の2種類があります。
こちらもAIが対応できないと判断した場合、問い合わせフォームなどを案内してくれるので、的確なオペレーションができます。
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IVR
「IVR」とは、自動音声応答システムのことです。ボイスボットと似ていますが、こちらは音声ガイダンスに沿って番号を入力してもらい、顧客の要望に合った担当部署を案内します。
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IVR(電話自動応答システム)とは?導入のメリット・デメリットなどを紹介
まとめ
本記事では、コールセンター業務をアウトソーシングする際に気をつけるべきポイントや外注先の会社の特徴について解説しました。
コールセンター業務をアウトソーシングすれば、オペレーターや機器の準備も含めて業務効率化を図れるだけではなく、コスト削減を実現することもできます。その結果、自社のコア業務に集中したり、新たなビジネスを展開したりできます。
コールセンターの業務を見直したいと考えている方は、ぜひ検討してみてください。
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