2021/09/07

音声マイニングとは?導入メリットや実現できること・事例を解説

音声マイニングとは?導入メリットや実現できること・事例を解説

コールセンター業務を効率化できる「音声マイニング」は、オペレーターの負担を軽減し顧客満足度を高めるツールです。AI技術を活用して音声をテキスト化し、内容を要約しつつ記録することが可能であり、多くの企業で導入が行われています。

本記事では、音声マイニングの基本からメリットや機能、ツールの選び方などを解説します。また、「ボイスボット」と呼ばれる顧客からの問い合わせに自動で応答するシステムも紹介するため、オペレーターや管理者の手間を減らしたい方はぜひご一読ください。

音声マイニングとは

音声マイニングとは、音声データをテキスト形式に起こし、データマイニングの一種であるテキストマイニングで有益な情報を分析・発掘することです。コールセンターでは、顧客対応で得られる音声データを対象とします。

収集方法は多岐に渡りますが、文字起こしやAI(人工知能)技術のボイスボット等によるテキスト化が一般的です。

音声マイニングは、顧客のニーズや傾向を分析することにより、ビジネスの改善や顧客満足度の向上に役立ちます。また、音声データから感情やトーンなどの情報を抽出することもでき、商品の改善やマーケティング戦略の立案にも活用されています。

音声マイニングの仕組み

音声マイニングの仕組みは、音声認識技術とテキストマイニング技術の組み合わせです。

音声認識技術は、音声を波形として読み取り、音声の特徴を分析し、その特徴に基づいて音声を文字に変換する技術です。テキストマイニング技術は、テキストデータから単語の出現頻度や関連性を分析し、必要な情報を抽出します。

この組み合わせによって、音声データから重要な情報の抽出を実現しています。

音声認識・テキストマイニングとの違い

音声認識とテキストマイニングの違いは、その役割にあります。

音声認識技術は、話者が発する音声を読み取り、それをテキスト形式に変換することが主な役割です。一方、テキストマイニングは、テキストデータから特定のパターンやトレンド、傾向をなどの情報を抽出することを目的としています。

この2つを組み合わせてテキスト化と分析を同時にできるのが、「音声マイニング」と呼ばれるものです。

音声マイニングが求められる理由

音声マイニングが求められる理由は、コールセンターで膨大に寄せられる音声データを効率よくテキストに変換し、分析に役立てることで顧客満足度の向上やマーケティングなどに利用できるためです。

具体的には、顧客からの問い合わせ内容やクレームの傾向を音声マイニングで把握することで、商品やサービスの改善点を見つけたり、求めている商品やサービスを把握したりするなどが挙げられます。

手作業での分析は非常に時間と労力がかかることを考えると、音声マイニング技術はコールセンターにおいてなくてはならない存在といえるでしょう。

【活用シーン】音声マイニングで実現できること

音声マイニングで実現できることの代表例を、以下に分けて紹介します。

  • VOCの詳細分析・抽出
  • テーマの自動要約
  • 自動リコメンド
  • 需要・傾向の予測

 

VOCの詳細分析・抽出

音声マイニングは、会話の内容を分析することで、顧客の声(VOC)を抽出できます。VOCとは、顧客が商品やサービスに対して抱く意見や感情のことを指します。

例えば、顧客からの問い合わせやクレームなど、コールセンターで発生する音声データを分析することで、顧客の感情やニーズ、要望などを詳細に把握することができ、それに基づいた改善策やサービスの提供が可能です。

テーマの自動要約

音声マイニングを活用することで、テーマの自動要約が実現できます。

膨大な音声データの中から、重要なキーワードやトピックを抽出し、それらをまとめることで、要約文を作成するなどが代表例です。人手で要約を作成する場合に比べて時間とコストを大幅に削減でき、客観的で一貫性があり、正確な情報を得られます。

自動リコメンド

音声マイニングの自動リコメンドは、ユーザーが発話した内容を解析し、その情報をもとに適切な情報や商品を提案できます。

例えば、ユーザーが好きなアーティストや曲を発話することで、その情報から似たような音楽を自動的にレコメンドできます。また、ユーザーが話題にしている商品やサービスに関する情報を収集し、その情報をもとに自動的に商品やサービスを提案することも可能です。

需要・傾向の予測

音声マイニングを応用することで、顧客の需要や市場の傾向を予測することが可能になります。

例えば、ある製品やトピックに関する問い合わせが増えている場合、その需要が高まっていることを予測できます。得られた需要の予測に基づいて製品の生産計画を立てたり、トレンドの分析に基づいてマーケティング戦略を検討したりできるでしょう。

コールセンターで音声マイニングを活用するメリット

コールセンターで音声マイニングを活用するメリットは、以下が挙げられます。

  • オペレーター業務の効率化
  • 応対品質の改善
  • ノウハウの蓄積・活用
  • 人材不足の解消
  • 新人教育・育成の自担
  • コストの削減
  • 新商品の開発・サービス改善

 

オペレーター業務の効率化

応対履歴の自動テキスト化は、オペレーターが手入力する手間を省き、後処理時間を大幅に短縮します。

聞き洩らしや内容を確認するために、通話録音を聞きなおす手間も必要ありません。

リコメンド機能を活用すれば、応対中のオペレーターに出現するキーワードに合わせて補足の案内情報やプラスワントークを促せます。

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応対品質の改善

音声マイニングを活用すればGoodワード・NGワードの出現率やプラスワントークの有無など、テキスト化によって優劣が見える化されるため、応対品質の改善に活かせます。

また、手作業による品質チェックでは全ての応対を評価、分析することは工数の関係上困難でしたが、自動マイニングにより多くのデータから改善点を洗い出すことが可能です。

ノウハウの蓄積・活用

応対の良し悪しをマニュアル化することは難しく、トップスキルの応対やクレーム内容の音源を共有して活用してきました。

音声をテキスト化することで、良い応対に含まれるキーワードや各オペレーターが持つ言い回しを蓄積し、マニュアルや研修資料として活用することでコールセンター全体の品質向上につながります。

人材不足の解消

音声マイニングを活用することで、コールセンターにおける人材不足の解消にもアプローチできます。

  • 過去の問い合わせ内容
  • 応対履歴
  • 関連FAQ
  • 該当マニュアル

 

などをシステムの画面上に素早く表示できます。これにより、オペレーターは迅速かつ正確な情報を得られ、負担も軽減できます。効率化できれば、新しく採用と育成を行わなくても、現在の人員で補えることもあるでしょう。

新人教育・育成の時短

音声マイニングでは、新人教育・育成の時短も実現できます。

新人オペレーターの応対履歴を分析し、データ化すると課題点が明確になります。これにより、適切なアドバイスを提供でき、研修時間の短縮や教育係の負担軽減にもつながります。

さらに、ベテラン・新人オペレーターの応対内容を比較して、改善点を洗い出すこともできるでしょう。

コストの削減

音声マイニングにより音源のテキスト化や分析ができれば、資料や報告書にかかる管理者の工数が大幅に削減され、残業時間が短縮されます。

また、オペレーターの負担が減ることにより離職率が下がるため、採用や教育にかかるコスト削減が期待できるでしょう。

リコメンド機能で応対を支援するため、1件あたりの対応時間も減り必要人数を抑えることも可能です。

新商品の開発・サービス改善

音声マイニングで顧客が電話やチャットなどで行う会話を自動的に解析し、その内容から顧客のニーズや不満を抽出すると、新商品の開発やサービス改善に役立てられます。

コールセンターに集まる「顧客の生の声」はVOC(Voice of Customer)と呼ばれ、新商品の開発やサービスの改善に役立つ重要なデータです。

顧客の要望や不満は、商品企画部、営業、CS事業部など、どこの部署にとっても貴重な情報で、オペレーターの応対履歴に頼ったVOCよりもできる限り「生の声」に近いデータが求められます。

音声データからは顧客の感情や態度など、テキストデータでは得られない情報も得られ、需要の高い商品の開発や顧客満足度の向上にも役立てられます。

音声マイニングツールの選び方

音声マイニングを導入するにはどのようなポイントで選べばよいのでしょうか?

ここでは、失敗しない音声マイニングツールの選び方をご紹介いたします。

分析できる範囲は十分か

音声マイニングツールによって分析できる範囲が異なるため、自社のニーズに合った製品を選ぶことが大切です。

例えば、感情の起伏を分析したい場合は、声の高さや大きさから感情を読み取る機能が搭載された製品が必要です。言葉づかいを重視する場合には、NGワードや推奨ワードを確認できるかを重視しましょう。

分析精度は高いか

変更前:分析精度の高さ

音声をテキスト化する際に最も重要な点は、音声を正確に認識できる精度の高さです。

搭載しているAIの種類によって品質に差が生じますが、ノイズや誤変換の少ないツールが望ましいです。

どの程度まで分析できるのかも大切なポイントで、声の高さや大きさ、抑揚、方言など、幅広い範囲で分析できる製品もあります。

必要な機能がついているか

ツールに備わっている機能は各社異なるので、自社に必要な機能の有無を確認しましょう。

多くの機能が備わっていれば価格も上がりますが、業務の効率化に役立つ機能が備わっていなければ安くてもあまり意味がありません。

「音声マイニングツールに何を求めるか」を検討し、それを達成できる機能が備わっているかを基準に考えると良いでしょう。

【音声マイニングツールの機能例】

  • 通話内容をテキスト化と内容の要約までしてくれる
  • キーワードを抽出し、注意喚起や推奨トークをリコメンド
  • オペレーターの自動評価
  • VOC分析

 

セキュリティは確保できるか

コールセンターでは多くの個人情報を取り扱うので、どのようなセキュリティ対策が取られているかも重視しなければなりません

情報漏えいを防止できるシステムか、蓄積されたデータは暗号化されているかなど、セキュリティレベルを比較し、できる限りセキュリティの高いツールを選びましょう。

運用しやすいか

高性能で優れたツールでも、管理や運用がしやすくなければ導入効果は期待できません。

管理者、オペレーター双方にとって使いやすく、サポート体制も充実したツールを選ぶことが大切です。

ツールの使い勝手は実際に導入しないと分からないこともあるため、お試し期間やデモ機の貸し出しがあれば是非試してみましょう。

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【具体例】コールセンターの音声マイニング活用

音声マイニングを使用すれば、テキスト化したデータからさまざまな情報を活用できます。

大量のデータを取り扱うコールセンターでは、蓄積された通話録音を分析し、顧客満足の向上や商品開発のヒントとなる情報を分析しなければなりません。

音声マイニングの技術は、コールセンターでどのように活用できるのでしょうか。

VOCの詳細分析

VOC(顧客の生の声)には、顧客のニーズ、不満、購買心理など、企業が活用すべき情報が豊富に含まれています。

企業と顧客の接点は複数ありますが、コールセンターはVOCが多く集まる窓口です。

オペレーターは全ての通話内容を要約し応対履歴に残していますが、多少主観が入ってしまいます。

しかし、音声マイニングの技術でテキスト化されたデータであれば、より正確なVOC分析ができます。

応対品質評価

コールセンターではオペレーターの品質向上や均一の品質を保つため、定期的に応対品質評価を行っています。

全案件をチェックできれば良いものの、設定された基準に則って評価(モニタリングチェックや採点)するには、工数が多くかかってしまいます。

音声マイニングの技術を使用すれば、全応対の中からNGワードや顧客満足を向上させる表現、プラスワントークの出現をチェックできるため、センター全体の応対品質向上に役立ちます。

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自動要約

音声マイニングの技術は通話録音だけでなく、電話対応中の音源も自動的にテキスト化できます。

オペレーター業務の中でも、通話履歴を残す作業(後処理)は負担と時間がかかるため課題となっています。

音声マイニングを使えば、オペレーターが内容を要約して記録に残さなくても自動的にテキスト化してくれるため、顧客との通話に集中することができ、品質向上や誤案内の防止にもつながります。

自動リコメンド

何度か訪れたことのあるショッピングサイトで、あるタイミングから自分に合った商品が表示されたことはありませんか?

これは「リコメンド機能」といって、購入・閲覧履歴からニーズを予測し自動的に表示される機能です。

音声マイニングのリコメンド機能は、応対中の音源を分析し、必要ワードや注意喚起をポップアップすることで応対支援を行い、推奨ワードを促したり聞き取りミスや案内漏れを防止します。

コールセンターの業務効率化ならボイスボットも検討

ボイスボットは、コールセンター業務の効率化に役立つシステムとして、多くの企業に導入されています。

コールセンターに寄せられる問い合わせを①AIが認識してテキスト化し、②テキスト化した内容を分析し、③回答文を作成して合成音声で読み上げる、という仕組みで、オペレーターを介さずに自動で応答できるのです。

音声マイニングのようにリコメンドや応対履歴を作成する機能はありませんが、問い合わせ内容と回答をテキスト化し蓄積することで、顧客の疑問点や不安、不満に思っていることを抽出し、顧客満足向上につなげることができます。

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まとめ

音声マイニングとは、音声データをテキスト形式に起こし、データマイニングの一種であるテキストマイニングで有益な情報を分析・発掘することです。音声マイニングは、顧客のニーズや傾向を分析することにより、ビジネスの改善や顧客満足度の向上に役立ちます。

音声マイニングの活用事例として、コールセンターではVOCの詳細分析、応対品質評価、自動要約、自動リコメンドが挙げられます。また、ボイスボットと組み合わせることで、より高度な自動応対が可能となり、オペレーターの業務効率化につながります。

システムを導入する際には、価格だけでなく備わっている機能や使い勝手を比較し、センター全体で使いやすいものを選び、効率の良いコールセンター運営を目指しましょう。

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