DX(デジタルトランスフォーメーション)推進にあたって重要になるのが経営戦略です。
しかし、以下のようの疑問をお持ちの方も多いことでしょう。
- 「なぜ経営戦略にDXを取り込まなければならないのだろうか?」
- 「どのような経営戦略だとDXを成功に導けるのだろうか?」
DX導入は会社全体に関わることなので、失敗は避けて通りたいものです。
そこでこの記事では、DX推進を成功させるための経営戦略の考え方について具体的に解説します。
DXにおける経営戦略とは
DXには、IT技術やデータを活用し既存システムを変更するといったことだけではなく、製品・サービス、プロセス、組織、業務などの他、企業文化や風土までも変革していく狙いがあります。
そのため、DXは事業最適として導入されるものではなく企業全体で行なわれることなので、企業戦略の大きな柱として経営層が主導するものです。
また、DXは経営戦略と事業戦略のどちらも重要です。
経営戦略、事業戦略、DX戦略の順に計画され、IT技術と各種データを有効活用しながら全体に変革を起こしていくことになるため、起点である経営戦略が最重要となります。
DXを経営戦略に取り込むべき理由
様々な業種の企業で注目を集めるDXですが、経営戦略に取り込むべき理由としてどのようなことが挙げられるのでしょうか?
「2025年の崖」問題
2018年9月に経済産業省が発表した「DXレポート」には、要約すると「もしDXが実現できなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる」と予測されています。
一方、もしDXが実現できれば「2030年に実質GDPが130兆円を超える」とされています。
そのため、いかに迅速にDXを実現して損失を少なくし、市場で生き残りを果たすことができるかが重要であるため、経営戦略に取り込む必要があるのです。
新たなサービス・商品の開発
DXが実現されると、精度の高いマーケティングや営業活動の効率化が期待できます。
しかし、DXや環境整備、施策が遅くなってしまうと将来的に激増することが予測されるデータ活用が行えないために、市場変化に順応できなくなるだけでなく、営業機会の損失を生み出してしまいます。
また、最悪の場合は企業倒産の危険性さえ考えられるのです。
業務効率化による利益率向上
従来企業では事業最適によって、各部署・部門がそれぞれ別々のシステムを設けているといった事例が多くありました。
しかし、DXは全体最適によってデータが一元管理・共有できるため、大きな業務効率化が期待できます。
そして無理や無駄も削減できるため、利益率向上までも期待できます。
DXを成功に導く経営戦略とITシステム構築のポイント
DXを成功させるためには、経営戦略の立案や企業全体での共有に加え、IT投資も欠かすことはできません。
では、経営戦略とITシステム構築にはどのようなポイントがあるのでしょうか?具体的に解説していきます。
経営戦略のポイント
経済産業省のDX推進ガイドラインのうち、「DX推進のための経営のあり方、仕組み」を整理し、「経営層による経営戦略の設定」「DX推進のための組織を整備」という2つのポイントを解説していきます。
経営層による経営戦略の設定
デジタル技術とデータの活用により、DXが自社にどのような価値をもたらすのかを検討し、どのようなビジネスモデルを構築するのかといった経営戦略を設定します。
明確な経営戦略がなければ組織は機能しないため、全社にビジョンを浸透させ、社内全体で共有することが重要になります。
また、経営層はDX実現に覚悟を持ってコミットし、リーダーシップを発揮して取り組むことが大切です。
DX推進のための組織を整備
DXを推進するためには組織を整備する必要があります。経済産業省のガイドラインでは、組織整備を次の3点で捉えることが重要としています。
- マインドセット(チャレンジを促進するような仮設の設定と検証、評価の体制づくり)
- 推進・サポート体制(各部署・部門にDXを推進するための係を設置)
- 人材(DX推進に向けた人材確保や育成)
以上3点のどれかが欠けてもDXの実現が困難になってしまいます。
顧客目線で価値のあるDXを目指す
DXはIT技術とデータを活用して市場での優位性を獲得することを目指しますが、ここで重要なのは自社都合ではなく顧客目線で価値のあるDXを実現するということです。
実現されたDXがたとえ業務効率化を生み出したとしても、それが顧客にとって価値を感じられるものになっていなければ、結局は市場での優位性も獲得できません。
例えば、業務効率化によってコストを削減し、製品・サービスがより安く顧客に提供できるようになる、といった顧客目線を忘れてはいけません。
市場の変化に柔軟に対応できるモデルを構築する
各業界において、ITなどの技術は日々目まぐるしく進化し、社会環境もスピードを上げて発展しています。
DXを推進するにしても、想定していた環境が予測以上に変化してしまった場合、DX推進計画も意味のないものになってしまいます。
DXを推進する上で重要なのは、定期的に外部環境や消費者動向を分析し、DX計画も柔軟に変更できるモデルを構築する必要があります。
ITシステム構築のポイント
経済産業省のDX推進ガイドラインのうち、「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」についてポイントを整理します。
ITシステム構築の体制と外部資源活用の2点から解説していきます。
ITシステム構築のための人材を確保・育成
ITシステムを構築するためには、人材の確保や育成が必要になります。
DX推進には「経営戦略や事業戦略策定に関わる人材」「戦略を具体的な設計に落とし込み、システム開発につなげられる人材」「現場でシステム開発を取り仕切る人材」など、それぞれの工程において様々な人材が関わることになります。
外部業者に委託することもDXを推進する上では大切ですが、丸投げしないためにも社内担当者の研修や育成が必要になります。
外部リソースを活用する
前述のように、社内リソースだけではまかなえない業務については、外部パートナーシップとうまく連携することも重要です。
その際、企業側と外部業者で上下関係を築くのではなく、あくまでDXを実現するための対等なパートナー関係を築くようにしましょう。
また、電話対応といった顧客対応の側面においてはボイスボット導入も有効です。
ボイスボットとは、対話型AIや音声認識、自然言語処理などの技術を駆使し、顧客やユーザーの音声を解析しながら回答を自動化できる仕組みです。
クレーム処理はコールセンターに委託すべき?対応ポイントを徹底解説!
経営層おけるDX戦略の3つのステップ
経営層はDX実現に対しどのようなステップで戦略を立てていくべきなのでしょうか?
ここでは3段階に分けて解説していきます。
DXの目的を明確にし、社内に共有する
まず、DX実現にあたり、自社のあるべき姿を明確にしましょう。
その際、IT技術やデータを活用し、どのようにビジネスモデルや業務内容、組織などを変革すると競争優位性を確立できるか、顧客から支持されるかといったことを明らかにしましょう。
そして、DX実現の目的を定めた後は社内で共有し、従業員が一丸となって同じ目的・目標に向かえるよう体制を整えていくことが経営層の役割です。
蓄積したデータを共通化させ、経営体制を確立する
蓄積されたデータは部署・部門内でのみ共通化を図るのではなく、関係箇所で幅広く活用するための基盤を構築していくことが重要です。
データを一元管理することで、製品・サービス開発、業務効率化、社内文化や風土など、これまで以上に変革をもたらせてくれます。
そのためには経営体制を確立し、組織をしっかりと固めましょう。そして、DXの運用体制も構築し、業務フローを明確にすることが大切になります。
コールセンターは必要?導入メリットや適切な検討方法について解説
既存ビジネスの高度化を行う
IT技術やデータを活用し、既存ビジネスの高度化や拡張を行なっていきましょう。
DX導入は業務効率化やオートメーション化だけのものではなく、ビジネスモデルや新製品・サービスの開発、市場優位性の確立など、自社をこれまで以上によい方向に導くための計画です。
蓄積されたデータやノウハウをより一層磨き、さらに高度なビジネスや市場シェア拡大などに挑戦していきましょう。
まとめ
DXを経営戦略に取り込むべき理由として、経済産業省がレポートする「2025年の崖」問題をクリアする、新製品・サービス開発、業務効率化などが挙げられます。
また、DXを成功に導くためには、明確な経営戦略を社内で共有するだけでなく、ITシステムを構築することも重要です。
経営層はDXの目的を明確にし、蓄積したデータを共通化させ、経営体制を確立しましょう。
そしてDX実現により、既存ビジネスの高度化を図りましょう。
関連資料