業務の効率化を図る上で、様々な業界から注目されているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。しかし、
- 「DXを実現することで具体的にはどのようなメリットがあるのだろう?」
- 「DX推進にあたって必要なことはどんなことなのだろう?」
そんな疑問をお持ちの方も多いことでしょう。
たしかにDXを実現していない、または未着手である企業がまだまだ大半であるため不明瞭な情報も多いのかもしれません。
そこでこの記事では、DXで業務効率化を図ることができる業務や事例などを具体的に解説していきます。
業務効率化の課題
DXは、業務の効率化を図るために行う企業が多いですが、現状の業務においてどのような課題を抱えている企業が多いのでしょうか?
一つずつ見ていくことにしましょう。
属人的な経営
諸外国企業の場合、従業員は賃金に見合う仕事だけを行うのが基本であるため、各企業はいかに業務効率を上げて収益を増やすかに重きを置きます。
しかし、日本企業では従業員一人ひとりの働きに経営層が依存してしまうことが業務効率化を下げてしまう原因の一つとして挙げられています。
従業員個々のスキルやサービス残業といった愛社精神に頼り、収益を上げている側面も数多くあります。
そのため、コストをかけてまで業務効率化を上げる必要性をそれほど感じていないというのが現状なのです。
既存システムへの固執
運用やメンテナンスが困難な既存システムを長年使用し、必要なデータを有効活用できていないことを問題として掲げている企業は少なくありません。
既存システムは運用やメンテナンスにおいて余計な費用がかかるため、使い続けるデメリットは大きいです。
しかし、「せっかく多額の費用を投じて導入したのだから」と古いシステムを手放す決断ができない経営層もいます。
さらに、既存システムが非効率であっても「我が社はこのやり方だから」といった理由だけで見直しすらされない事例も数多くあるのです。
DXに取り組む理由
DXを妨げている根深い原因や課題がおわかりいただけたでしょうか。
では、それでも各企業がDX推進に取り組むべき理由はいったいどのようことが挙げられるのでしょうか?
具体的に解説していきます。
業務効率の改善
老朽化したシステムは運用やメンテナンスに多額のコストがかかるだけでなく処理スピードも遅く、業務が期待通りに進まないこともあります。
しかしDXが実現されると、処理スピードが上がるだけでなく、正確な分析や作業のオートメーション化も見込めます。
業務効率が改善されるうえに、作業のオートメーション化によって生まれたリソースを他業務に回すことも可能になります。
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データの管理・共有が容易になる
DXによるデータ一元化によって、管理と共有が容易になります。DXは部門最適ではなく、全体最適を目的として取り組まなければなりません。
従来、多くの企業では部署・部門がそれぞれに適したシステムを別々に用いるケースがほとんどでしたが、それではシステム間の互換性が乏しくデータ管理や共有が困難でした。
DXによるデータ一元管理は部署・部門間のデータ連携がスムーズになるため、部署をまたぐ業務に発生するデータ入力においても、重複による時間ロスや入力・転記ミスの削減といった効率化を生み出してくれます。
BCPの充実
DX導入により、BCPの充実化を図ることも可能になります。
BCPとはBusiness Continuity Planの略で、事業継続計画のことを指します。
BCPは自然災害や感染症といった緊急事態が発生した際に、システム障害などの業務損失を可能な限り抑え、スピーディーに復旧するための計画です。例えば、
- クラウド導入により、テレワークでも業務を円滑に進めることができる
- 感染症などで外出が規制されていても、ネットショップ販売で売上アップができる
などが期待できます。
新たなサービスを開発できる
DXは企業全体をデジタル化しスピーディーに対応できるといったことだけではなく、新たな製品・サービスやビジネスモデルの開発が可能となることも導入目的の一つとなります。
各種の最先端デジタルテクノロジーを活用し新たな製品・サービスやビジネスモデルを開発することで、社会の急激な変化にも柔軟に対応できるようになります。
働き方改革を実現する
DXは働き方改革も実現します。
プロジェクト管理のための各種ツール、社内イントラネット、コラボレーションツール、経費精算システムなど、従来の働き方に大きな変革をもたらすツールを導入し、業務効率がアップすることもDXの大きな狙いとなります。
さらに、こうした様々なツールを導入することで、よりリモートワークが加速するなど、働き方まで変わるのです。
DX推進に必要なこと
DX推進は企業全体で取り組む必要がありますが、その実現化に向け、何をどのようにして進めればよいのでしょうか?
DX推進に必要なことを具体的に解説していきます。
DXの目的を共有
まず、DX推進によって生み出される自社のあるべき姿、つまりゴールイメージを明確にしましょう。
そして、どんなことを目的としてDXを推進するのか、会社全体に共有する必要があります。
ITやデジタル化というと、「よくはわからいけど、何か変革をもたらせてくれそうだ」といった考えになる人もいるでしょう。
しかし、これでは進むべき道がわからなくなり、部署・部門の動きもそれぞれ別々になってしまうリスクがあります。
ITシステムの構築
DXを推進する際、次のような選択肢があります。
- 自社でシステム開発し運営する
- 外部業者にシステム開発を依頼する
- 既存の外部システムを新しく使用する
いずれにせよITシステム構築には多額の費用がかかります。
経営層がDX推進に対して目的や意思を持ち、リーダーシップを発揮しながらITシステムを構築していく必要があります。
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社内の組織改革
すでにITシステム業務を担当する部署・部門があるのであれば、DX推進もこうした既存担当で進めることができます。
しかし、該当部署・部門がない場合は社内の組織改革が必要となり、新たに部門を作らなければなりません。
また、外部業者に依頼する場合でも業者にすべて丸投げするのではなく、社内に担当部門を設置し、自社と外部業者の橋渡しとなるよう積極的に関わる必要があります。
IT人材の確保・育成
DXを実現するためには、計画やシステム設計、運用を行うためのスキルを持った人材が求められます。
社内にこうした担当者がいない場合、新たに採用するか、社内の人材にITスキルを身につけるための研修や育成制度が必要となります。
また、ITシステムの構築に直接関わらない部署・部門であったとしても、実務に関わるスタッフが要件定義などに参加することも重要です。
DXツール導入の事例
DXツールには、目的や手段に応じたツールが存在します。具体的にその事例について解説していきます。
顧客接点のDX
顧客接点として重要なチャネルの一つが電話です。その電話対応のDX事例として挙げられるのがボイスボットです。
ボイスボットは音声認識や自然言語処理、対話型AIなどの技術を用いて顧客やユーザーからかかってきた電話への応対を自動化してくれます。
内容に応じて自動返答やオペレーターへの転送処理を行い、顧客やユーザーが求める情報をスムーズに提供することがボイスボットの役割となります。
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社内コミュニケーションのDX
社内コミュニケーションを円滑に行うための主なDXツールとして、以下のものが挙げられます。
- チャットツール
- オンライン会議ツール
- RPAツール(パソコンを使用して行う定型作業等を自動化できるツール)
- オンラインストレージ(クラウド上でデータ保存や共有、編集できるツール)
- MAツール(企業のマーケティング活動を効率化するためのツールで、市場調査や分析、データ集計などを効率化・自動化を行う)
- CRM(顧客管理ツール)
- チャットボット(チャットに顧客が質問を入力すると、適切な回答をAIが自動表示するツール)
- BIツール(ビッグデータなどを活用し、企業のデータ分析を効率化するツール)
営業のDX
従来の「足で稼ぐ」営業から、DXを活用した事例として以下のものが挙げられます。
- 営業メールの配信(顧客へのアプローチ数を増やす。複数の相手にメール送信できるので、営業効率が改善される)
- 営業コンテンツの作成(web上などで顧客自らが課題解決できるコンテンツを用意し、自社サービスへと誘導する)
- オンライン商談の導入
- SFAの活用(営業案件管理、商談進捗や営業担当者同士の情報共有、見積もり作成などの作業を効率化するためのツール)
まとめ
DXを妨げる原因として、属人的な経営や既存システムへの固執が挙げられます。
DXは業務効率を改善し、データの一元化により管理や共有が容易になるといったメリットがあります。
また、不測の事態でも事業継続を可能なものにしてくれるほか、新たなサービス開発や働き方改革を実現できることにも期待できます。
DX推進には目的を社内全体で共有することやITシステムの構築、担当部署の決定、IT人材の確保・育成が必要となります。
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