企業やコールセンターでの電話対応を効率化させるには、マニュアル作成も有効な手段です。
またマニュアルを作る工程では業務フローを洗い出すため、業務の見直しやリスク対策も実施できます。
この記事では電話対応の基礎を確認し、マニュアル作成の手順を解説します。
マニュアル作りに役立つボイスボットについても取り上げているので、 教育コストの改善や対応品質を向上させたいとお悩みの方は参考にしてください。
電話対応の基本と心構え
まずは電話対応の基本と心構えについて解説します。理解していても、見落としがあるかもしれません。
今一度ご自身の電話対応を基礎から見直すのも良いでしょう。
会社の顔である意識を持つ
対応中は自分が会社の代表になっている意識を持ちましょう。相手からすれば対応している人が会社との窓口であり、顔となります。
権限のない平社員またはアルバイトスタッフだから関係ないといった事情は通用しません。
会社を代表しているという自覚を持ち、適切に対応しましょう。
敬称や敬語を正しく使う
ビジネスでは敬称・敬語を適切に使い分けなければ相手に対し悪い印象を与えてしまいます。
例えば、対応中に社内の人間に役職名を付けたり、こちらの行動に尊敬語を使ったりするのは間違いです。
日頃から正しい敬語表現を意識し、言葉遣いに気を配るようにしましょう。
メモを残せる準備をする
電話での対応中はいつでもメモを取れるよう備えておきます。
相手がどのタイミングで重要な内容を話すかわかりません。
メモに残す必要があると途中で気づき聞き返すことのないよう、対応中は常にメモを取る習慣を付けましょう。
言葉遣いに気をつける
敬称・敬語の使い方だけでなく、その他の言葉遣いにも注意点があります。
電話は声だけで対話するため、言葉遣いが印象に大きく作用します。
話し方や言葉遣いが間違っていたとしても、自分では気づけないこともあるでしょう。
周りの人に言葉遣いを注意されていないか、普段の自分を振り返っておくことも大切です。
「もしもし」や「はいはい」とは言わない
電話で言いがちな言葉ですが「もしもし」や「はいはい」といった発言は、ビジネスでは不適切です。
受電時は「お電話ありがとうございます。○○(企業名)でございます」といったフレーズで会話に入ります。
架電時は「お世話になります。○○(企業名)の○○でございます」と名乗るようにしましょう。
「はいはい」と返してしまうと、適当に聞き流しているような印象を与えます。
「はい、承知いたしました」「はい、承りました」といった表現がビジネスでは適切です。
文のはじめに否定語は使わない
否定語から話し始めると、相手にマイナス印象を与えます。
話の中で相手の誤解や間違いを指摘したいこともあるでしょう。
しかし否定語を最初に出してしまうと、頭ごなしに拒否しているように感じさせます。
強く否定されたと感じた相手はこちらの意見を聞き入れてくれません。
「しかし」「ですが」といった言葉から始めず、相手の発言を受け止める姿勢を見せましょう。
例えば「左様でございますか」「それはご不便をおかけいたしました」といった言葉で相槌を打ちながら、相手が見落としている部分について解決策を提案するように話します。
曖昧な表現をしない
会話の中で曖昧な表現を使うと、言いたいことがぼやけます。
内容が伝わりにくくなり、相手を苛立たせてしまう可能性もあります。
「たぶん」「思います」「かも」といった文言は避けましょう。
明確に答えられない場合は正直に伝え、確認してから回答します。
資料を見直したり担当者に問い合わせる必要があるなど、確認に時間を要する場合は改めてかけ直すようにしましょう。
語尾を伸ばさない
語尾を伸ばした話し方は、幼稚な印象や片手間に対応しているような雰囲気になります。
ビジネスでは、ハキハキとした話し方が基本です。
話し方のクセが出ないよう、普段から注意しましょう。
受電マニュアル
ここからは受電時の正しい対応について解説します。新人を指導するときも参考になるので、頭に入れておきましょう。
2~3コール以内に受話器を取る
会社の電話が鳴った場合、2~3コール以内に出るよう指導している企業が多いでしょう。
しかし、その回数までは鳴っていても良いという意味ではありません。
たとえ1コールだとしても相手を待たせていると認識し、可能な限り素早く対応しましょう。
やむを得ず4コール以上鳴ってしまったときは「大変お待たせいたしました」といった言葉を入れます。
会社名・部署名・氏名を名乗る
電話に出る際は、はじめにこちらが何者であるかを名乗ります。
「お電話ありがとうございます。株式会社○○の○○課担当○○でございます」 |
相手の会社名を復唱する
相手の会社名や名前を聞いたら、聞き間違えていないか確認するため挨拶を入れながら復唱しましょう。
「いつもお世話になっております。株式会社〇〇の〇〇様でいらっしゃいますね」 |
電話を取り次ぐ
かけてきた相手が誰なのか把握したうえで、指名された担当者に取り次ぎます。
「〇〇でございますね、ただいまおつなぎいたしますので、少々お待ちください」 |
取り次ぐ相手が不在の場合は、不在理由と戻る時間を伝える
指名された担当者が外出中や会議中であったりと、その場で取り次げないこともあるでしょう。
その場合は、取り次げない理由と戻りの予定を伝えます。
「あいにく○○は外出しておりまして、帰社予定は○時頃となっております」 「○○は○時より会議に入っておりまして、終了は○時頃の予定でございます」 |
また、取り次げない旨を伝えれば終わりではなく、相手の要求を汲み取ることも重要です。
内容によっては、担当者に代わって回答できることもあるでしょう。
連絡してきた事情を確認し、代わりにできることがないかを提案します。
「恐れ入りますが、可能でしたら私がご用件をお伺いし本人に申し伝えておきますが、いかがでしょうか。」 |
かけてきた理由が、答えられる範囲の事柄であればその場で回答しましょう。
改めて担当からかけ直したのでは、余計に待たせてしまいます。
自分では判断ができないことや担当者でなければ回答できないことについては、改めて回答すると伝えます。
また、かけ直す際の連絡先も忘れずに確認しておきましょう。
「その件につきましては、担当より改めてお電話いたします。ご連絡先をいただけますか」 |
挨拶をして電話を切る
対応が終われば、挨拶をしてから電話を切ります。要件を聞き終わったからといって、すぐに切るのはマナー違反です。
これで通話を終わるという旨を伝えるためにも「お電話ありがとうございました。失礼いたします」といった挨拶で締めくくりましょう。
担当者にメモを残す
担当者からの折り返し連絡が必要であったり伝言を預かったりした場合は、メモを残して担当者に渡しましょう。
ただし、メモに書いて相手の机に置けば完了ではありません。
メモの内容が伝わったかを確認するまでは自分が対応中であると覚えておきましょう。
事務所に担当者が戻らない場合、紙に書いたメモを机においても見てもらえません。
メールやメッセージツールを使いメモした内容を伝えるなど、状況に応じた伝え方をしましょう。
架電マニュアル
続いて、こちらから電話をかける際の架電マニュアルについて解説します。
事前準備を怠らない
架電時には、事前準備は怠らないようにしましょう。
電話をかけて問い合わせるという行為は相手に時間を使わせるので、簡潔に済むよう要件をまとめておきます。
会話の最中で対応に迷ったり、何度もかけ直したりしないよう注意しましょう。
会社名・部署名・氏名を名乗る
受電時と同じく、まずは自分が何者であるかを名乗ります。
「お世話になります。○○(会社名)の○○担当、○○でございます」 |
担当者へ取次をお願いする
名乗ったうえで、担当者と直接話したい場合は、取り次ぎをお願いします。
「恐れ入りますが、弊社担当の○○様はいらっしゃいますでしょうか?」 |
担当者に繋がった場合は要件を伝える
取り次ぎ後に改めて名乗り、時間があるか確認してから要件に入ります。
「いつもお世話になっております、〇〇社の○○です。ただ今お時間よろしいでしょうか?」 |
担当者が不在の場合は、掛け直す
担当者が不在であった場合は、基本的にはかけ直すようにしましょう。改めて連絡する旨を伝えます。
「承知いたしました。それでは時間を改めてご連絡いたしますので、○○様によろしくお伝えください」 |
事前に担当者との会話で不在時は伝言を残すよう、依頼されることもあるでしょう。
その場合は伝言をお願いしたいと伝え、メモの準備ができるよう対応してくれている人に配慮します。
「それでは、○○様に伝言をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」 |
相手が電話を切るまで待つ
相手への連絡や確認、伝言が済んだら挨拶を交わし通話終了です。
ただし突然ガチャ切りするようなことにならないよう、相手が電話を切ったか確認してからこちらの受話器を置きます。
クレーム電話対応の注意点
ときには顧客からのクレームに遭遇することもあるでしょう。クレームの電話に対応する際の注意点を解説します。
怒りを鎮めるよう対応する
クレーム対応では、相手の怒りを鎮めることが重要です。さらなる怒りを買わないよう、次のことに注意して対応しましょう。
話を遮らない
途中で話を遮られると、相手の怒りは静まるどころか、新たな怒りを生んでしまいます。
クレームの中には相手の思い込みや勘違い、または理不尽な内容もあるでしょう。
しかし、遮って言い返すような対応は禁物です。
話を遮ってこちらが主張すれば、相手は「話を聞いてくれない、自分を理解してくれない」と感じます。
結果、どんなに正しい説明をしても聞き入れてもらえず、クレームが解決しません。
相槌を入れながら相手の話を聞き、状況を理解するよう努めます。
話を聞いてもらえていると感じた相手は、安心感や信頼を寄せてくれるでしょう。
解決方法の提案を聞いてもらいやすくなり、早期解決につながります。
待たせすぎない
クレーム対応中は、相手を待たせすぎないよう注意します。
話の中で担当者に取り次いだり確認しないと回答できない場面もあるでしょう。
しかし保留状態で相手を長く待たせてしまうと、苛立ちを募らせる原因になります。
すぐに回答できなかったり担当者と連絡がつかないという場合は、折返し電話するといった対応を取ります。
たらい回しをしない
クレーム対応のたらい回しにも、注意しましょう。
担当者が不在・不明という理由で次々と違う人に取り次がれ解決を先送りにすると、相手を怒らせる原因になります。
すぐに対応できないならば、その旨を伝えこちらからかけ直すという流れにしましょう。
担当者不在時の対応フローについてはあらかじめ決めておき、周知徹底するのも重要です。
クッショントークを用いて対応する
クレーム対応中の会話では、クッショントークを取り入れ柔らかい言葉遣いになるよう心がけます。
「よろしければ」「左様でございますか」「お手数おかけいたしますが」といった表現を会話の中にいれることで、丁寧な印象を与えられます。
クッショントークを用いつつ相手のペースにあわせて対応をしていくことが重要です。
責任逃れをしない
クレーム対応中は、責任逃れと取られるような発言は止めましょう。
たとえ自分に関係のないクレームであっても、電話してきた相手はあなたの会社に対して不満を持っています。
電話に出る際は自分が会社の代表であることを忘れず、相手の言葉を真摯に受け止めます。
お詫びをする
クレーム内容を聞いたうえでこちら側に非があるならば、誠意を持って謝罪します。
「不具合がございまして、大変失礼いたしました」 「不適切な対応をいたしましたこと、お詫び申し上げます」 |
こちらに非があるか確認できなければ、怒らせている状況に対して詫びるようにしましょう。
「ご不便をおかけし、申し訳ございません」 |
確認できない状況で謝罪するとこちらに問題があると認めたことになり、その後の対応がこじれる原因になります。
二次クレームを防止する
クレームを受けた場合に対応方法が悪いと、新たなクレームを生んでしまいます。
こうした二次クレームを防止することもクレーム対応では重要です。
専門用語を多用しない
クレーム対応中は、誰でも理解できる単語を使い、専門用語は極力避けましょう。
不親切な伝え方では相手に理解されず、悪い印象を与えてしまいます。
上手な切り方を使う
誤解や不信感を与えないため、何らかの指摘を頂いた後は以下のようにお礼を述べ、今後の活用を伝えることで誠実さを伝えます。
「頂きましたご意見は社内で共有し、改善に努めます」 「貴重なご意見、ありがとうございました。担当にも伝え、対応を検討いたします」 |
電話対応マニュアルを作成するメリット
電話対応の効率化を図るには、対応マニュアルの作成も有効です。
また、マニュアル作成のメリットは業務効率化だけではありません。
業務品質の向上
マニュアル作成は業務効率化や新人教育に役立つほか、業務品質の向上にもなります。
マニュアル作成時に業務の流れを洗い出すため、フローが適切であるかを見直す機会になるでしょう。
重複している業務は統合したり、担当者ごとにやり方が違うなら効率の良い方法に統一するといった業務の集約・均一化を図ります。
また、問題点が見つかれば重点的に強化し、業務品質を底上げしましょう。
オペレーターごとの対応品質の差をなくす
マニュアルを作成・導入することで、対応するオペレーターの違いによる品質差をなくせます。
個人の資質や経験に依存しない一定水準の対応ができれば、顧客満足度も上がるでしょう。
特定の担当者のみに業務が集中するのを防ぎ、コールセンター全体のレベルアップになります。
リスクマネジメントに繋がる
リスクマネジメントの点から見ても、マニュアル作成は重要です。
問題発生時の対処方法についてあらかじめマニュアルで決まっていれば、対応に困りません。
素早く的確な対応ができ、リスク回避やトラブルの早期解決が可能になります。
マニュアル作成の手順
ここからは、マニュアルの作り方を解説します。
対応マニュアルの作成を考えている場合は、紹介する手順を参考にしてください。
業務の全体像を把握し、項目ごと分類する
最初にマニュアルを作成する業務の全体像を把握し、段階ごとに分類します。
実際の業務に携わっているオペレーターからヒアリングし、業務実態を確認しましょう。
コールセンターであれば次のような分類が考えられます。
- 電話に出る際の挨拶、話し方
- 問い合わせ内容の確認
- 聞き出した内容の整理、復唱
- 対処方法の提案
- 通話終了時の挨拶
それぞれのステップでどのような展開が予想されるか、よくある問い合わせは何があるかを洗い出していきます。
わかりやすい構成を作成する
業務全体の確認や項目ごとの分類ができれば、それらを整理しマニュアル化するにあたっての構成を考えます。
新人指導に使用する際や対応に困った時、素早く確認できる内容であることが重要です。
分かりやすい見出しを付けたり、フローチャートを作ったりしましょう。
実際の業務にあたる人が理解しやすいかという観点が大切です。
実務で役立つマニュアルになるよう実際に使う時を想定した構成にしましょう。
日々アップデートする
マニュアルが完成したら、日々のアップデートも行います。運用を始めてから、修正点が見つかることもあるでしょう。
また、新たな商品・サービスがリリースされたなら、それにまつわる問い合わせが増えることも考えられます。
定期的に内容の修正・強化をしなければ、せっかく作成したマニュアルが活用されません。
日々のアップデートには、使用している現場からの意見が出しやすい環境づくりも重要です。
マニュアルだけでなく、業務も仕組み化する
マニュアル作成を進めると対応品質を均一化できるだけでなく、業務の仕組化も可能になります。
受電内容を担当者に伝える際、対応したオペレーターごとに連絡方法がバラバラであるならば統一しましょう。
連絡時のテンプレートが用意されていれば、連絡する度に一から文章を考える手間も省けます。
連絡を受けた担当者の対応状況について見える化できる仕組みを取り入れれば、対応漏れを防げるでしょう。
やり方を統一しツールを活用して業務の仕組化を進めれば、組織全体の対応品質を向上できます。
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マニュアル作成の際にシステム導入をするメリット
マニュアル作成時には便利なシステムを導入することで、効率よく作業を進められます。
マニュアルを導入すると業務効率化や組織の成長に役立ちますが、作成には時間がかかるものです。
マニュアル更新の際も、指摘事項の取りまとめは手間を要するでしょう。システムの導入によって、時間や手間を省けます。
蓄積したデータを用いて、マニュアルを改善できる
これまでの対応データを参照・分析できれば、マニュアルに加えるべき事柄も見つけやすくなります。
例えばボイスボットは受電の一次対応ができるだけでなく、問い合わせ内容をテキスト化しデータとしての蓄積が可能です。
問い合わせの多かった内容を企業ホームページのFAQに掲載すれば、受電件数も減らせるでしょう。
対処法をオペレーターに共有しておけば、素早い対応が可能になります。
業務効率化や顧客満足度向上に繋がる
ボイスボットを導入することで、業務効率化や顧客満足度の向上が期待できます。
ボイスボットが問い合わせ内容を判別し最適な担当者に割り振れば、素早く対応ができます。
過去の問い合わせを参照し、必要とする答えが見つけやすいマニュアル作りに役立つでしょう。
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まとめ
ビジネスでの電話対応は、普段の話し言葉との切り替えや言葉遣いなど、注意すべき事柄があります。
受電・架電のマナーやクレームへの適切な対処を身に着けましょう。
コールセンターや企業内の受電業務を効率化するには、マニュアルの作成・導入が重要です。
しかし、業務内容を洗い出しての作成には時間も手間もかかります。
ボイスボットはマニュアル作成の効率化にも貢献します。
過去の問合せ内容の分析に役立ち、マニュアルに反映する事柄が見つけやすくなるでしょう。
マニュアルを導入すれば顧客満足度の向上にもつながるので、利用を検討してはいかがでしょうか。
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