コールセンターは、受け答え一つで企業のイメージを左右する大事な部署です。
しかし、コールセンターの業務効率化や顧客満足度に課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、コールセンターにおけるマネジメントの課題解決やコールセンターの業務効率化を図る、IVR(自動音声応答システム)について解説します。
また、IVRの課題を解決する手段として注目されている「ボイスボット」も紹介します。電話対応の最適化を模索中の方は、ぜひチェックしてみてください。
IVRがコールセンターに求められる理由
お客様からのお問い合わせが多く、決まった曜日や時間帯に「あふれ呼」が発生してしまっているコールセンターがあるのではないでしょうか。
あふれ呼とは、接続数が一度に接続できる件数を上回り、すべての電話に対応できない状態のことです。
あふれ呼が起こると、顧客の待ち時間が長くなり、顧客満足度の低下にもつながります。
また、オペレーターの在籍数が多く、人件費が多額になってしまっているコールセンターもあるでしょう。
しかし、お問い合わせ1件に対してオペレーター1人が対応しなければならないコールセンターでは、オペレーター数を減らすことが難しいのではないでしょうか。
このような悩みを抱えているコールセンターは、IVRを導入することをおすすめします。
IVRの導入が向いているコールセンターについて、大きく3つに分けて解説します。
コールセンターに複数の窓口がある
サービスや製品、お問い合わせに対してなど、窓口を分けて設置しているコールセンターはIVRの導入がおすすめです。
IVRは、一つの窓口から問い合わせ内容に合わせて自動で割り振りを行うことができるため、担当に取り次ぐためのオペレーターの人員を削減できます。
さらに、お問い合わせ内容によっては、自動音声で対応することも可能です。
また、接続先の担当の電話が塞がっていた場合でも掛け直しに誘導することもできるため、お客様の待ち時間を減らすこともできます。
通常業務に支障が出ている
開発を担当する社員が製品の使い方などの問い合わせを担当しているコールセンターも、IVRの導入がおすすめです。
普段は開発を行っている社員が電話対応をしているため、開発業務に時間を割けなくなっているという課題があるのではないでしょうか。
この場合は、専門的な内容に対しても自動応答が可能なIVRを導入することで、開発を担当する社員は本来の業務に集中できます。
さらに、新人オペレーターの教育業務に苦労している場合もIVRを導入することが効果的です。
IVRはお問い合わせ内容に合わせて担当者に振り分けることができるため、オペレーターに専門知識を教えるなどの教育が不必要になります。
IVRで解決できるコールセンターの課題
コールセンターにおけるマネジメント上の課題は、「応対品質の低下」、「離職率の高さ」、「新人・中堅の教育停滞」、「マネジメントの難度」が挙げられます。
まずは、それぞれの内容を具体的に確認していきましょう。
応対品質の低下
コールセンターにおけるマネジメント課題の中でも、応対品質の低下は重大な課題です。
オペレーターの応対品質向上のため、経験の少ないオペレーター向けの業務マニュアルやフローチャートを用意している企業もあるかもしれません。
しかし、コールセンターのオペレーターは「ただ電話で問い合わせの対応をするだけ」という状況になりやすい傾向にあります。
受け答え一つで与える印象は大きく異なるため、オペレーターのモチベーション低下は、会社に対する印象の低下につながりかねません。
離職率の高さ
コールセンターは、オペレーターの離職率が高い部署です。
離職率の高さにはさまざまな理由が考えられますが、前述のモチベーション低下が起きやすいことだけでなく、「自分に責任のないクレームに対応するストレス」「社内の要求水準や評価基準が曖昧になりやすい状況」などから、オペレーターは精神的に追い詰められ安い状況に陥ります。
しかし、スタッフのメンタルヘルスケアに努めている企業は多くないため、コールセンターの離職率は低下せず、慢性的な人手不足が続いているのです。
このような状況では、コールセンターに電話をかけてきた顧客を長く待たせることになったり、スタッフの経験不足により十分な対応ができなかったりと、問題が生じやすくなります。結果的に顧客満足度の低下を招くことになりかねません。
新人・中堅の教育停滞
新人・中堅の教育停滞もコールセンターでは避けられない課題です。
慢性的な人手不足により、十分な研修制度が整っていないコールセンターは少なくありません。
十分な研修が行われないと、オペレーターに必要な商品知識が身に付かず、顧客からの問い合わせ対応につまずいてしまいます。
顧客からの問い合わせ対応につまずくことがオペレーターの離職の原因になり、さらなる人手不足につながるという悪循環が生まれるのです。
このようなコールセンターにおける教育停滞は、解決が困難といえます。
マネジメントの難度
コールセンターという業界は、マネジメントが難しい傾向にあります。
なぜなら、コールセンターでは部署単位やチーム単位で仕事をすることがほとんどないからです。
こうして生まれた「個人で仕事をする」という意識は、前述した「応対品質の低下」、「離職率の高さ」、「新人・中堅の教育停滞」のような課題の解決をより困難にしているのです。
社員間の交流が少ないと、部署内で課題を解決しようとする意識が生まれにくくなったり、社員が悩みを一人で抱え込みやすくなったりする傾向があります。
したがって、チーム単位で仕事をすることが少ないコールセンターでは、社員のマネジメントが困難といえます。
IVRをコールセンターで導入するメリット
IVRを導入すると、企業とお客様のどちらに対してもメリットがあります。
そこで、IVRを導入することによるメリットを4つ紹介します。
コールセンターの業務効率化や生産性の向上を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
応答率を高められる
IVR導入していない場合、お問い合わせ先の電話が既に埋まっている時にお客様を待たせてしまう時間が長くなってしまいます。
全てのお客様の電話に出られず、応答率が悪くなってしまうという課題があります。そこで、IVRの導入によって簡単な問い合わせであれば自動音声のみで対応することが可能になります。
その結果、お客様を待たせる時間が減り、応答率が向上するでしょう。
さらに、接続先の電話が既に埋まっている場合でも、折り返し電話の予約をすることもできます。IVRの導入により、対応できる電話の数が増えるといえるでしょう。
顧客満足度を高められる
IVRの導入は、お客様はすぐに担当部署へ接続でき、顧客満足度の向上にも効果があります。
お問い合わせ内容の解決に要する時間を短縮できるため、顧客満足度の向上やブランド力アップにもつながるでしょう。
さらに、お問い合わせ内容に応じて担当部署のオペレーターに接続されるため、たらい回しによるストレスがなくなります。課題解決を効率よく行うことで、お客様の満足度アップが期待できます。
人員不足を解消できる
IVRで担当部署への振り分けを行えば、お客様が適切な窓口に直接つながるようになり、スタッフの負担を減らす効果が期待できます。
スタッフの負担を軽減するとそれに合わせて残業時間が減るなど、コールセンターのスタッフが働きやすい環境になるため、離職の防止にもつながります。
さらに、導入前よりも少ないオペレーターの数で営業できるため、人件費削減にも効果があります。
生産性を高められる
IVRの導入により、電話の受付をしてからお問い合わせ内容に合わせた担当部署への振り分けをするという1つの手順が不要になります。
これにより、コールセンターの業務を大幅に効率化できるでしょう。業務効率化が進めば、人件費を削減できる可能性がありますし、さらに浮いた人材を他部署・他業務に回すなど人員配置を最適化して業務効率化を図ることもできます。
企業内の生産性をより高めるためにも、IVRを導入することがおすすめです。
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IVRをコールセンターで導入するデメリット
IVRでは決まった音声データを再生するため、ガイダンス等の音声を最後まで聞く必要があることに対してストレスを感じるお客様がいるでしょう。
また、お客様がボタンを押し間違えるなどのミスをしてしまう可能性もあります。その場合、担当ではない接続先に振り分けられ、お客様に無駄な時間と手間がかかってしまいます。ボタンの押し間違えに気をつける旨のアナウンスを加えることがおすすめです。
さらに、シナリオ設計が不十分だと、お客様はどの接続先を選べばいいかわからずにその他のお問い合わせを選ぶことが考えられます。
すると、その他のお問い合わせへの接続件数が多くなり、お客様を待たせる時間が生まれます。お客様を待たせないためにも、シナリオ設計は適切に行いましょう。
IVRをコールセンターで導入する費用の目安
用途や対象 | 月額料金 | サービス |
---|---|---|
①基本的なIVR機能のみ使用したい人向け | 4,500円 | ・自動応答音声 ・ナレーター音声 ・番号による接続先分岐 ・電話転送 |
②予約業態の事業者向け | 6,000円 | ①に加えて ・電話予約受付 |
③IVRをより使いこなしたい人向け | 7,500円 | ①に加えて ・グループへの一斉転送 ・無応答時再転送 ・電話接続先ごとのカスタマイズ |
IVRの導入の初期費用は、1台あたりのサーバーライセンスとチャネルライセンスを合わせて30〜50万円ほどが目安です。また、月額として定期的に料金を支払う必要があります。
月額料金はメーカーによってかなり幅が広く、月々数千〜数万円ほどが目安です。ただし、IVRに求める範囲によっても異なります。
例えば、顧客を適切なオペレーターにつなげる窓口や、顧客の音声録音など、どの機能を求めるかによって料金は変わってきます。自社にどの機能が必要か検討するようにしましょう。
IVRをコールセンターで活用する方法の例
コールセンターでIVRを導入すると、退会の申し込みなどの各種手続きをオペレーターに接続せずに対応できます。
お問い合わせの要件によっては、お客様が音声にしたがってボタン操作をするだけで手続きが完了するため、時間と手間が大幅に削減されます。また、コールセンターでキャンペーンやイベントを行うときに、IVRを一定期間だけ導入することがあります。
クラウド型のIVRは一定期間のみの導入が可能であるため、キャンペーンやイベントを実施するのに最適です。クラウド型のIVRはクラウドサービスのため、初期費用がかからず、さらに短期間で利用開始できます。
一定期間のみIVRを導入したい場合には、クラウド型のIVRを導入することがおすすめです。
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IVRをコールセンターに導入するポイント
細かなミスや不具合に気づきやすくするために、定期的に内容やシナリオ設計を確認することが重要です。
また、サービスの内容の変更や問い合わせデータをもとにIVRの内容を変更する必要があるため、定期的な確認を怠ってはいけません。
ガイダンスの長さを最小限にとどめることや、選択肢や階層をなるべく少なくすることなど、お客様にストレスを与えないための工夫も必要です。それに加えて、選択肢にオペレーターに接続する項目を入れるようにしましょう。
お客様の中には、最初からオペレーターと話をしたい方や、自分の要件がどの選択肢に該当するかわからない方もいます。
以上のポイントを意識することで、全てのお客様のお問い合わせにストレスを感じさせずに正しく対応できるでしょう。
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【例文あり】IVR(自動応答システム)のガイダンス設定のポイントを紹介
そもそもIVR(自動音声応対システム)とは
IVRとは、Interactive Voice Responseから頭文字を取った略で、「自動音声応答システム」のことです。自動で流れる音声ガイダンスに沿って顧客に番号を入力してもらうことで、担当部署に直接電話がつながるサービスです。
企業のコールセンターに電話をした際、「お電話ありがとうございます。こちらは○○株式会社です。音声案内にしたがってご希望の番号を押してください……」といったガイダンスを聞いたことがある方は少なくないでしょう。このガイダンスを流す機能がIVRです。
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IVR(電話自動応答システム)とは?導入のメリット・デメリットなどを紹介
コールセンターに「ボイスボット」という新しい選択肢
ここまで、コールセンターにIVRを導入するメリットなどを見てきました。最近ではIVRの弱点をカバーするサービスとして、IVRと似た自動音声応答システム「ボイスボット」が新たな選択肢として登場しています。
ボイスボットとは、顧客に問い合わせの内容を直接話してもらい、自然言語処理や対話型AIといった技術を用いてそのまま対話をして回答、もしくは担当部署に電話をつなげるサービスです。
顧客が電話をかけるとガイダンスを流す点はIVRと同様ですが、ボイスボットでは番号入力の必要なく、用件をそのまま話してもらい自動音声で回答します。
IVRでは実現できない「ボイスボットならできること」を以下に紹介します。
24時間365日いつでも自動対応
ボイスボットを導入すると、窓口担当のオペレーターがいない時間帯でもお客様のお問い合わせに対応できます。そのため、コールセンターが営業していない土日や祝日でもお客様のお問い合わせに対応できます。
また、自動音声で回答しながら適切なオペレーターや部署に振り分けできるのも利点です。
IVRは「樹形図シナリオ形式」のため、あらかじめ設定された流れに沿って応答します。そのため、特に階層が深い場合はいくつも番号を入力しないと担当部署につながらないなど、顧客に不評な点もありました。
一方、ボイスボットは「AI対話エンジンによる対話形式」のため、顧客は番号入力の手間が省け、すぐに担当部署へつながります。平日は仕事が忙しいという方や、休日しか時間がない方でも24時間365日、時間を気にせずに要件を解決できます。
お客様にとっての利便性を大幅に高められる効果が期待できるでしょう。
よくある質問のお問い合わせにも自動対応
ボイスボットはIVR以上に無人対応で完結できる選択肢が多いため、オペレーターに接続する必要がなく、顧客の問い合わせに要する時間を大幅に短縮できます。これにより、オペレーターは簡単なお問い合わせ以外の業務に集中できます。
さらに、事前に電話番号や名前などの必要な情報を自動でヒアリングし、その内容を転送するため、コールセンター業務の効率化を図ることも可能です。例えば、人員を割く必要があるトラブル対応やクレーム、新規顧客の獲得などに手を回せる社員が増えるといったものが代表例です。
ボイスボットの詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。興味のある方は合わせてご覧ください。
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まとめ
IVRを導入すると、業務効率化や人件費の削減、顧客満足度の向上などのメリットが得られます。
また、IVRに似た音声自動応答システム「ボイスボット」は、IVRの「番号入力の手間」「担当部署につながるまでに時間がかかる」といった弱点を克服し、かつIVR以上に無人対応で完結できる選択肢も多いことが特徴です。
ボイスボットなら、顧客の問い合わせに要する時間を大幅に短縮することも可能です。
企業の「顔」ともなるコールセンターにボイスボットを導入することで、業務効率化はもちろん、顧客満足度の向上、ひいては企業のブランド力アップが期待できるでしょう。
ボイスボットを導入するなら「AI Messenger Voicebot」
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