2021/09/07

AI感情認識・分析とは?導入のメリット・デメリットを実例付きで解説

AI感情認識・分析とは?導入のメリット・デメリットを実例付きで解説

AIを使った感情分析は、コールセンターのサービスを大幅に改善する可能性を秘めています。顧客からの問い合わせに対して迅速かつ適切な対応を行えるだけでなく、業務の効率化とオペレーターの負担軽減にもつながります。

本記事では、AIによる感情認識・分析の基本とコールセンターで活用するメリットを解説します。また、導入方法や手軽に感情認識を取り入れられるボイスボットやチャットボットにも触れるため、ぜひご一読ください。

AI(人工知能)感情認識・分析とは

AIによる感情分析とは、人間の感情や気持ちの変化をAIが分析することを指します。顔の表情や声はもちろん、文章もその分析対象となっています。

現在は分析対象もまだ限られてはいますが、将来的には人間の言動や脈拍、脳波、瞳孔の動き、発汗等、細かな変化を分析しながらトータルで感情を判断できるようなAIの誕生も期待されています。

これまで人間の感情を分析し、把握することは人間でしか不可能とされてきました。AIであっても、「感情が持てない人工知能に、人間を分析できるのか?」といった思いを抱く方々はたくさんいましたが、現在ではAIによって人間の感情を分析できるようになってきました。

パソコンやスマホの普及により、インターネット上のサービスやSNSなどのコミュニケーションツールは年々増え続けています。

企業も実店舗ばかりでなく、web上を中心にさまざまな販売チャネルを構築し、運営していますが、チャネルの増加に伴い増えていくのが、オペレーターによる顧客対応です。

顔の見えない顧客の声や文章から感情を読み取るのがオペレーターの重要な役割ですが、現在、こうしたAIによる感情分析はコールセンターでも積極的に活用されています。

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AI感情認識・分析の4つの種類

AIによる感情認識・分析には、主に4つの種類があります。

  • 文字(テキスト)感情認識・分析
  • 音声の感情認識・分析
  • 表情の感情認識・分析
  • 生体情報の感情認識・分析

 

文字(テキスト)感情認識・分析

テキストによる感情認識・分析は、文章の単語選びや文脈から、その文章がどのような感情を表しているかを判断する技術です。

感情認識AIの事例としてネガティブ・ニュートラル・ポジティブといった3種類しか分類できないものから、喜怒哀楽、好き嫌いなど細かく分類できるもの、さらに感情レベルを数値化できるものなどさまざまです。

文脈によって感情が異なる場合や、ニュアンスを含む表現の場合には正確な判断が難しいことがあり、精度の向上が続けられています。

音声の感情認識・分析

音声の感情認識・分析は、声の高低や強弱、話し方のリズムから、話し手がどのような感情を持っているかを判断する技術です。

  • 怒りや不満を感じている場合:声が大きくなり、トーンが高くなる
  • 喜びや興奮を感じている場合:声が明るくなり、トーンが上がる
  • 悲しみや落胆を感じている場合:声が小さくなり、トーンが低くなる

 

などの音声から感情を自動的に認識し、分析できます。これにより、コールセンターや音声アシスタントなどの分野で、より高度なサービスが提供されることが期待されています。

表情の感情認識・分析

表情の感情認識・分析は、顔の筋肉の動きや目の動き、口の形などから、人がどのような感情を持っているかを判断する技術です。

例えば、AI技術を用いて表情から感情を判断するシステムでは、カメラで撮影した顔の画像を解析し、表情から感情を読み取れます。顧客サービスの分野で、顧客の表情から不満や不快感を読み取り、適切な対応をするといった活用が期待されます。

目の動きや瞳孔の開き方といった情報から、被験者が無意識で表した気持ちや考えを推測する研究も一部で始まっており、より高度な表情の感情認識・分析も可能になることが期待されます。

生体情報の感情認識・分析

生体情報の感情認識・分析は、心拍数や皮膚温度、脳波などの人間の身体から発せられるさまざまな情報を利用して、感情を読み取る技術です

例えば、心拍数が上昇している場合は、興奮している可能性が高く、逆に低下している場合は、リラックスしている可能性があります。また、喜びや怒りなどの感情は、脳波のパターンが異なるため、それを分析することで感情を読み取れます。

生体情報による感情認識・分析には、個人情報の保護や倫理的な問題があり、適切な取り扱いが求められるものの、今後の応用が期待される分野です。

コールセンターでAI感情認識・分析が注目される理由

コールセンターは顧客とのコミュニケーションにおいて、文字(テキスト)だけでなく、音声や表情、生体情報など、さまざまな要素が含まれるため、AIによる感情認識・分析が注目されています。

AIによる感情認識・分析は複数の要素を総合的に判断し、顧客の感情を定量化できるため、顧客の満足度を把握できます。感情的になっている場合には冷静さを取り戻せるようにアプローチでき、不安を検知できれば細かく説明するなどの柔軟な対応への活用が期待できるでしょう。

また、大量のデータを処理できるため、顧客の嗜好や傾向を分析し、マーケティングに活用することも可能です。チャットボットやボイスボットとの親和性も高く、感情を汲み取りつつ適切に対応するといった役割をAIが担うことも期待されています。

AI感情分析をコールセンターに導入するメリット

AI感情分析をコールセンターに導入すると、オペレーターや顧客の感情変化をAIが分析することになります。

こうした感情変化のデータを業務改善に活かすことができれば、さまざまなメリットを生み出すことができます。では、そのメリットについて具体的に解説します。

オペレーターのストレスを軽減できる

顧客・ユーザーから毎日多数の問い合わせや、日によってはクレームが寄せられるため、オペレーターには大きな精神的負担がかかっています。

オペレーターの発声からAI感情分析で精神状態を判定し、感情を推定することで的確なフォローが可能となります。

例えば「顧客に対して怒りをぶつけてしまった」「落ち込んだトーンで会話している」といった感情が可視化できるため、そのオペレーターに合った指導を行えます。

離職率を軽減できる

AI感情分析をコールセンターに導入することには、オペレーターの離職率を軽減するという大きなメリットがあります。

従来のコールセンターでは、オペレーターが顧客からのクレームや不満を受け止める際に、ストレスやプレッシャーを感じることがありました。しかし、AI感情分析を導入することで、オペレーターが顧客の感情を正確に把握し、適切な対応を取れます。

これにより、オペレーターのストレスやプレッシャーを軽減し、離職率を下げられます。その他、代わりに対応したり、メンタルケアを実施したりする指標としても利用できるため、オペレーターが働きやすい環境づくりにも活用できるでしょう。

クレームを未然に防止できる

クレームに発展してしまいそうな顧客対応でも、感情分析を行うことによって拾い上げることができます。顧客が発する言葉のトーンや抑揚、言葉遣いをAIが常に分析することで、表面化していないクレームを可視化できるためです。

こうしたデータをもとにマニュアルやトークスクリプトを見直し、対応可能なオペレーターを優先的に担当させるといったことも可能になるため、クレームを未然に防ぐことができます。

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顧客満足度を向上できる

オペレーターが電話越しでは把握できない、顧客の気持ちの変化や感情の機微をAIが察知し、業務を改善していきます。

電話応対が長い、手続きのミスなどでストレスを感じた顧客の気持ちをスピーディに把握し、社内で対策を検討できるため、状況が改善されるのです。

経験の浅いオペレーターでも、顧客の気持ちに寄り添える接客やミスの軽減が可能となるため、顧客満足度の向上も期待できます。

成約率を高められる

顧客が商品購入を検討している際もAIによる感情分析を行うことで、購入決定時の顧客の感情や気持ちの変化を読み取ることが可能になります。

こうしたデータをマーケティングや商品・サービス開発、販売戦略に展開して、より効果的なオペレーションを行うことができるようになるため、成約率の増加も期待できます。

VOC収集を効率化できる

AI感情分析をコールセンターに導入することによって、VOC(Voice of Customer)収集を効率化できます。

従来の手法では、コールセンターのオペレーターが顧客との会話を録音し、その後に手作業で分析を行う必要がありました。しかし、AI感情分析を導入することで、自動的に顧客の感情を分析できます。

また、AI感情分析によって客の不満や要望を分析することで改善点を把握し、商品やサービスの改善に繋げることができます。これによって、顧客満足度の向上に繋がることが期待されます。

AI感情認識・分析の課題・デメリット

AIは感情認識・分析において高度な技術を活用して感情を認識・分析できますが、微妙なニュアンスや文脈によっては正確に判断できない課題が残っています。また、人間の感情は複雑で多様であり、AIが全てをカバーすることは難しいでしょう。

こうしたことを受け、AIだけで完結することができないのがデメリットです。ただし、人が手を入れることで、新たなシナジーを生むことができます。例えば、AIが感情を認識した後、人がその情報を元に適切な対応をすることで、より良い結果を生み出したり、誤認識を防いだりするなどが挙げられます。

課題やデメリットこそありますが、AIを活用しつつ人による高度な処理を行う体制を構築し、効率化やコスト削減、顧客満足度の向上を狙いましょう。

コールセンターにおけるAI感情分析の活用事例

AI感情分析は、そのツールをコールセンターの現場でどのように活用されているのでしょうか?ここでは3つの事例を解説します。

まず1つ目がAI音声分析です。 オペレーターと顧客の音声から感情や気持ちの変化を読み取り、分析するのがAI音声分析で、蓄積されたデータをもとに、コールセンターではスーパーバイザーの分析やオペレーターへのコーチングが行われています。

また、顧客へのトークスクリプトやマニュアル作成にも応用されています。 次に2つ目がAI音声アシスタントです。

分析のみを行うのではなく、顧客一人ひとりに合った適切な対応ができるよう、AIがオペレーターを支援します。オペレーターと顧客の会話をAIがデータ蓄積し、モニタリングします。

そして、最適な話し方や、相手に不快感を与えない声のトーン、また、どのようなタイミングで会話を中断すべきかも提案してくれるため、コールセンターでの業務改善にも活かされています。

最後に3つ目が感情認識AIです。 表情から人間の感情を分析するAI技術が、コールセンターの現場でも活用されています。

あるメーカーではカメラ搭載のパソコンやタブレットで利用できる表情トレーニングアプリが開発されており、顧客の表情分析やオペレーターの教育をはじめ、顧客への商品提案やプレゼンを行う時に、安心してもらえるための表情トレーニングが可能になっています。

こうした技術をコールセンター全体で取り入れることで、表情改善への意識が高まった企業もあります。

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AIソリューションでコールセンターを効率化

ここまでAIの感情分析について解説してきましたが、ボイスボットやチャットボットを活用すれば比較的簡単に感情分析を導入できます。

ボイスボットとは

ボイスボットとは、音声認識、自然言語処理、対話型AI等の技術を利用し、顧客・ユーザーの音声内容を分析するシステムのことを指します。

ボイスボットは「AI自動応答システム」とも呼ばれ、企業や店舗での電話応対自動化を可能にします。

具体的には、顧客やユーザーから電話があると、まず事前に設定したガイダンスが流れます。その後顧客やユーザーが要件を話すと、その電話内容に応じてボイスボットが返答します。

また、電話内容によってはボイスボットがオペレーターへ転送処理を行うこともあります。 このように、顧客やユーザーが希望する情報を迅速に、そしてスムーズに提供することがボイスボットの役目なのです。

チャットボットとは

チャットボットとは、人工知能を活用して自動応答を行うツールのことです。24時間365日稼働できるため、顧客からの問い合わせに対して、迅速かつ正確な回答を提供できます。

人工知能によって学習することができ、より正確な回答を提供できます。

ただし、複雑な問い合わせには対応できない場合があるため、人間のオペレーターと併用することで、より高度な問い合わせに対応を実現しましょう。

チャットボット・ボイスボット導入のメリット

チャットボット・ボイスボットをコールセンターに導入すると、業務の効率化・簡素化やオペレーターのストレス軽減などが期待できます。ここでは、チャットボット・ボイスボットを導入することで生み出されるメリットについて具体的に解説します。

取り次ぎや伝言の工数が削減できる

チャットボット・ボイスボットを導入すると、顧客・ユーザーからの問い合わせに対し、一次対応を任せることができます。二次対応を転送されたオペレーターが行うにしても、事前に基本的な顧客情報や要件が把握できているため、業務の効率化を図ることができます。

また、取り次ぎや伝言は時間が取られてしまうものですが、チャットボット・ボイスボットを活用することでその工数は削減できます。

顧客から営業マンまで多岐に対応が可能

コールセンターには顧客・ユーザーからの問い合わせの他、時に他社の営業マンから売込みの電話やメール、FAXが届くこともあります。

このような対応をすべてオペレーターが行っていたのでは、「あふれ呼」件数が増加してしまいます。 ボイスボットの導入は、顧客・ユーザーから営業マンまで多岐に渡る対応が可能となるため、オペレーターの負担も軽減できます。

365日24時間電話対応できる

オペレーターの対応は、基本的には営業時間内に限られます。しかし、チャットボット・ボイスボットの電話対応は営業時間外でも可能になります。

つまり、設定によっては365日24時間での電話やチャット応対が可能となるため、これまで取りこぼしていた顧客にも対応することができ、機会損失を防ぐことができます。

まとめ

AI感情認識・分析には、文字、音声、表情、生体情報から感情を判断する4つの方法があります。

オペレーターの負担軽減、顧客対応の迅速化、365日24時間の電話対応可能性などのメリットがあり、感情認識・分析技術のコールセンターへの活用は、コスト削減と顧客満足度向上の両立を実現する有効な手段となり得るものと考えられます。

ボイスボットやチャットボットを導入することで、感情分析を比較的簡単に導入することが可能です。顧客からの問い合わせに対して迅速かつ適切な対応を実現し、業務の効率化とオペレーターの負担軽減に役立ててください。

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